2025年1月15日(水)

World Energy Watch

2025年1月15日

 米国に関しては、バイデン大統領が24年12月にアンゴラを訪問し、初のサブサハラ・アフリカ訪問を実現させた。米国が支援する大規模な鉄道プロジェクトは、鉱物資源が豊富な内陸のコンゴ民主共和国およびザンビアをアンゴラの大西洋岸にあるロビト港と結び、欧米諸国への迅速かつ効率的な輸出ルートを提供するものである。

鉱物確保に向けた日本の課題

 中国に続いて、湾岸産油国や欧米諸国が重要鉱物を狙う中、日本も重要鉱物の確保に向けて動き出す必要性がある。石破茂政権が24年11月に半導体やAI分野に今後7年間で10兆円以上の公的支援を行う方針を表明したことから、この先、両産業が急拡大する見通しである。

 一方、日本は米国と同様、半導体材料のガリウムおよびゲルマニウムの大半を中国からの輸入している。過去、中国が日本に対しレアアースの輸出停止を政治的カードとして利用した経緯を踏まえると、重要鉱物をめぐる米中の対立の余波が日本にも及び、中国からの調達に支障が出る可能性も否定できない。

 中国依存を軽減するため、日本も重要鉱物の調達先を可能な限り多角化することや、鉱物開発に直接関与することが求められる。これらは、民間企業任せでなく、国主導で取り組むべき課題である。政府は22年に経済安全保障推進法の枠組みで、半導体材料やリチウムイオンバッテリーの原材料などの探鉱・精錬事業に助成金を交付し、日本企業を財政面で支える体制を構築した。

 一方、アフリカの鉱物事業への参入ハードルが高い点を考慮すると、日本は22年発足の鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)参加国(主要7カ国〈G7〉やオーストラリア、インド、韓国など15カ国)に加え、新たなパートナー国を見出すことも重要だ。

 選択肢が限られるが、近年アフリカ関与を強めているUAEやサウジアラビアが協力候補国となるだろう。UAEは潤沢な資金力を駆使して、アフリカ各地の鉱物事業への参入数を増やすなど、アフリカで中国と競合できる数少ない国である。またサウジアラビアについては、米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が23年9月に米国・サウジアラビア間のアフリカの鉱物確保に関する協力を報じるなど、サウジアラビアが世界の鉱物サプライチェーンで重要な役割を担うと予想される。

 日本はUAE・サウジアラビアそれぞれと原油調達を通じて二国間関係を発展させてきた。両国からの原油輸入は23年に総輸入量の約8割にのぼり、両国は日本のエネルギー安全保障に欠かせない存在である。日本がAI・半導体産業の拡大を目指し、それに必要な重要鉱物を安定的に確保していく上でも、MSP参加国と並んで、UAE・サウジアラビアとの連携も深めていくべきであろう。

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