2025年1月16日(木)

BBC News

2025年1月16日

ジェレミー・ボウエン国際編集長

イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意は大きな成果だ。とっくに実現されているべきだった。

昨年5月以降、交渉のテーブルには合意案のさまざまなバージョンが置かれてきた。ハマスとイスラエルは、時間がかかっているのは相手のせいだと互いを非難してきた。

ハマスは2023年10月7日の攻撃で民間人を中心に約1200人を殺害した。イスラエルはそれに軍事力で対応し、ガザ地区は廃墟と化した。200万人を優に超えるガザ住民のほとんどが避難している。

ハマスが運営する保健当局によると、イスラエルの攻撃で、戦闘員と民間人を合わせて5万人近くが殺された。英医学誌ランセットに掲載された最近の研究は、この人数が過小である可能性を指摘している。

今回の合意をめぐる最初の大きな課題は、停戦を確実に維持することだ。西側の外交関係者らは、42日間とされている第1段階の後に戦争が再開されることを恐れている。

ガザでの戦争は、中東全域に甚大な影響を及ぼしてきた。

多くの人が恐れていた、中東地域での全面戦争には至らなかった(アメリカのジョー・バイデン政権は、自分たちの功績だとしている)。だが、戦略地政学的な激変をもたらした。

ハマスにはまだ戦闘能力があるが、かつての面影はない。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント前国防相は、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪の疑いで逮捕状が出されている

イスラエルの行為はジェノサイド(集団虐殺)に当たると南アフリカが主張しており、国際司法裁判所(ICJ)はこの訴えについて調査を進めている。

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、戦争に介入し、イスラエルの攻撃で大打撃を受けた。

それが、シリアのバッシャール・アル・アサド政権の崩壊の要因となった。

イランとイスラエルは直接攻撃し合い、イランは弱体化した。同国が「抵抗の枢軸」と呼ぶ、同国の同盟国と代理組織でつくるネットワークは、機能不全に陥った。

イエメンの反政府武装組織フーシ派は、紅海を通るヨーロッパ・アジア間の海運の大部分を停止させた。ガザでの停戦が合意された今、攻撃をやめるという言葉をフーシ派が守るのかは、まだわからない。

イスラエルとパレスチナの長い紛争は、かつてないほど苛烈なものとなっている。

停戦は、運よくいけば、殺し合いを止め、イスラエル人の人質とパレスチナ人の拘束者・収監者を家族のもとに返すかもしれない。

しかし、1世紀以上続く紛争を終わらせはしない。

(英語記事 Bowen: Long-overdue ceasefire may stop the killing but won't end the conflict

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0rqn41pld7o


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