2025年1月16日(木)

BBC News

2025年1月16日

パレスチナ・ガザ地区で戦闘を続けるイスラエルとイスラム組織ハマスが、段階的な停戦と人質解放に合意したと、交渉を仲介するカタールとアメリカが15日、発表した。2023年に始まった両者の戦闘は、1年3カ月に及んでいる。

カタールのムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アル・サニ首相は、イスラエル内閣が承認すれば、停戦合意は19日に発効すると説明した。

アメリカのジョー・バイデン大統領は、「ガザでの戦闘を止め、パレスチナの市民への待ち望まれた人道支援を急増させ、人質を家族と再会させる」ための合意だと述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、合意の最終的な詳細についてはまだ検討中だとしつつ、バイデン氏による合意の「推進」に感謝すると述べた。

ハマスのハリル・アル=ハイヤ副代表は、パレスチナ人の「回復力」が合意をもたらしたと述べた。

多くのパレスチナ人や、イスラエル人人質の家族らは、停戦合意の知らせに歓喜した。しかし、ガザでの地上戦が収まる気配はなかった。

ハマスが運営する民間防衛隊によると、ガザでは、カタールが停戦合意を発表した後にもイスラエル軍の空爆があり、20人以上が死亡した。死者には、ガザ市シェイク・ラドワン地区の住宅街で暮らしていた12人も含まれるという。イスラエル軍はこれについて、即座にはコメントしていない。

ハマスは2023年10月7日、イスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛け、約1200人を殺害。251人を人質に取った。イスラエルは直後に、ハマス壊滅を掲げてガザでの軍事作戦を開始した。ハマスはイスラエルやアメリカなどからテロ組織に指定されている。

ハマス運営のガザ保健省は、イスラエルの報復攻撃で、ガザではこれまでに4万6700人以上が死亡したとしている。約230万人のガザ人口の大半が家を追われ、広範囲が破壊されている。また、支援を必要とする人々への物資確保に苦慮しており、食料や燃料、医薬品、避難所の不足が深刻化している。

イスラエルによると、94人の人質が今もハマスに拘束されている。そのうち34人はすでに死亡したとされる。このほか、2023年10月以前から拘束されている人質が4人いるが、うち2人は死亡したという。

合意内容は

合意の第1段階は、6週間続き、「全面的かつ完全な停戦」が実施されると、バイデン米大統領は15日、説明した。

イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人受刑者数百人と引き換えに、女性や高齢者、病人など、ハマスが拘束している「多数の人質」が解放されることになる。

カタールのアル・サニ首相によると、最初に解放されるイスラエル人人質は33人になる見込み。

イスラエル政府のダヴド・メンサー報道官は以前、子供を含む人質33人の大半はまだ生存していると思われると述べていた。

パレスチナの当局者が以前、BBCに語ったところによると、まず3人の人質が直ちに解放され、残りの人質については6週間かけて交換が行われる。

第1段階では、イスラエル部隊はガザの「すべての」人口密集地域から撤退し、「パレスチナ人はガザのすべての地域に戻れる」ようになると、バイデン氏は述べた。

また、ガザに1日あたり数百台のトラックが入ることが認められ、同地区への人道援助物資の搬入が急増することになる。

停戦は「交渉が続く限り」継続するだろうと、バイデン氏は述べた。

第2段階に向けた交渉は、停戦の16日目に開始される予定。

バイデン氏によると、第2段階は「戦争の恒久的な終結」になるという。

さらに多くのパレスチナ人収監者を釈放する見返りに、男性を含む、残りのイスラエル人人質を解放することが求められる。

イスラエルが釈放することで同意したと思われる、1000人のパレスチナ人収監者のうち約190人は、15年以上収監されている。

イスラエル政府関係者は以前、BBCに対し、殺人罪で有罪となった収監者については、釈放してパレスチナ・ヨルダン川西岸に戻すつもりはないと語っていた。

第2段階で、イスラエル軍はガザから全面撤退することになる。

最終段階である第3段階には、ガザの復興(数年を要する可能性がある)と、残された人質の遺体の返還が含まれる。

「戦争の最後の1ページ」になることを望むと

カタールのアル・サニ首相は、「第2段階と第3段階の交渉には明確なメカニズム」があるとし、「詳細がまとまり次第、数日中に」合意内容が公表される予定だと述べた。

また、イスラエルとハマスが義務を果たすよう、カタール、アメリカ、エジプトの3カ国が協力していくともした。

「我々は、これが戦争の最後の1ページになることを望んでいる。すべての当事者が、この合意のすべての条件の履行に取り組むことを望んでいる」と、アル・サニ氏は付け加えた。

「骨を折ってきた米外交の成果」

今回の停戦案を8カ月前に初めて提示したバイデン氏は、合意に至ったのは「ハマスが受けてきた極度の圧力と、レバノンでの停戦とイランの弱体化によって変化した地域情勢だけでなく、根気強く骨を折ってきたアメリカの外交の成果でもある」と述べた。

「我々は(合意の)知らせを歓迎すると同時に、ハマスによる(2023年)10月7日の攻撃で愛する人を殺害されたすべての家族と、その後の戦争で殺害された罪のない多くの人々のことを思っている」と、バイデン氏は声明で付け加えた。「戦闘を終結させ、平和と安全を構築するための作業を開始する時期はとっくに過ぎている」。

バイデン氏はその後の記者会見で、合意の実現には、ドナルド・トランプ次期大統領の助けがあったことを認めた。トランプ次期大統領は、イスラエルとハマスの双方に、20日の大統領就任式までに人質を解放するよう圧力をかけていた。

バイデン氏は、「この数日間、我々は一つのチームとして発言してきた」とし、合意の大半の履行は自分の退任後に行われることになると述べた。

トランプ氏は、アメリカとカタールが公式に発表する前に、イスラエルとハマスが停戦で合意したとの報道が事実であることを認めていた。

「(昨年)11月の我々の歴史的勝利の結果のみがもたらすことができた」「素晴らしい」合意だと、トランプ氏はソーシャルメディアに投稿した。

イスラエルの反応

イスラエル首相官邸は、トランプ氏が「人質の解放を推進し、イスラエルが数十人の人質とその家族の苦しみを終わらせられるよう力になってくれた」と感謝を表明した。

「ネタニヤフ首相は、どんな手段を使ってでも、すべての人質を連れ戻すという約束を明確にしている」とし、バイデン氏にも感謝の意を伝えたと付け加えた。

イスラエル首相官邸はその後、ネタニヤフ氏の公式声明は「現在取り組んでいる合意の最終的な詳細がまとまってから発表される」とした。

イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、合意は「深い痛みを伴う」もので、「重大な挑戦」だが「正しい動き」だと述べた。

ネタニヤフ政権は連立を組む政党から反発を受けているものの、停戦合意は早ければ16日朝にも、イスラエル内閣で承認される見込み。

イスラエル政府は今後、釈放予定のパレスチナ人収監者全員の名前を公表する。収監者には、殺人罪やテロ罪で有罪となり、終身刑に服している人もいる。

「解放と帰還への道筋」とハマス

ハマスの交渉担当者ハリル・アル=ハイヤ副代表は、今回の合意は「敵との対立における節目であり、解放と帰還というわが民族の目標達成への道筋」を示すものだと述べた。

そして、ハマスは今後、「ガザを再び再建し、痛みを和らげ、傷を癒やす」ことを目指すと付け加えた。

一方で、ガザのパレスチナ人が被った苦しみを「我々は忘れないし、許さない」とも警告した。

(英語記事 Gaza ceasefire deal agreed by Israel and Hamas, Qatar and US sayWhat we know about the Gaza ceasefire deal

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c3vpre7r7x4o


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