2025年1月16日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年1月16日

 ニューヨーク・タイムズ紙コラムニストのフリードマンが、12月13日付けの論説‘The First New Foreign Policy Challenge for Trump Just Become Clear’で、シリアは中東の要石であり、可能性は低いがシリアに民主的な政権ができれば、それは中東全域に波及するという成果が期待し得るので、米国は北大西洋条約機構(NATO)や日本等と共に有志国連合を結成してシリア復興に関与すべきである、と論じている。要旨は次の通り。

(bestdesigns/gettyimages・代表撮影/ロイター/アフロ・dvids)

 シリアの混乱はシリア国内に止まらないだろう。シリアは、中東の要石であると同時にそれ自体が一つの世界だからだ。シリアには、国内にスンニ派、シーア派、アラウィ派、クルド人、キリスト教徒、ドールズ教徒がいるので中東の縮図と言える。

 中央政府が弱まれば全ての派閥は脆弱さを感じて外部勢力に助けを求め、外部勢力はシリアを自分達に都合が良いようにしようとするだろう。しかし、シリアで良い変化が起きればそれは域内全域に広まる。

 アサド政権を国内の反政府勢力が倒したのは過去45年間で最も前向きな中東における変化であり、トランプ次期政権が外交的成果を上げるチャンスだ。しかし、そのためには積極的な米国の関与が必要だろう。

 仮にシリアの人々がボトムアップにより市民社会に基づく民主主義を実現できれば、それは、イラク、レバノン、イラン、スーダン他に広まるのだろうか。もちろん、これは難しいことだが、実現出来れば、それはシリア人と中東地域全体に大きな恩恵をもたらすだろうし、それを支援する米国とその同盟国にとって少ない資金と軍事力で済む。しかし、これは米国の支援、リーダーシップ、一貫して強固な外交等無しには実現しないだろう。

 他方、シリア国内で権力闘争と外国勢力のシリアへの干渉が起きれば、それは中東全体に波及し、「イスラム国」の復活や脆弱なイラクの民主主義を不安定化させるだろう。


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