2025年1月16日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年1月16日

 シリア問題は、トランプ次期政権が世界的に直面する問題の縮図だと考える。崩壊し、世界に脅威を与える国家をどのように扱うのか。強さではなく弱さゆえに米国とその同盟国を悩ましている国々があるが、トランプ次期政権の重要な課題は、米国民が耐えうるコストでのそういう国家の再建・修復である。

 もちろん、トランプには、シリアに関与しないというオプションもある。実際、前政権の時はそうした。他方、トランプは、シリアが正しい方向に向かうことを助けることが唯一の方法であることを理解出来るかも知れない。しかも、NATO、日本、韓国、豪州、もしかすると中国やインドも含めた有志国連合を組むことが出来れば、受け入れ可能なコストですむだろう。

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危ういシリアの統治

 上記は、米国のメディアで中東の第一人者とみなされているフリードマンの論説だが、あまりにも楽観論に満ちていると言わざるを得ない。まず、アサド政権を崩壊させたシャーム解放機構(HTS)に対して「部外者は、励まし、圧力を掛けてそうなるようにするべきである」として、彼らが穏健化することを期待しているが、現実と乖離しているように思われる。

 HTSは、アルカイダとは縁を切って穏健なイスラム原理主義勢力になると喧伝しているにも関わらず、HTSの支配地域ではHTSによる政敵に対する殺人、誘拐、脅迫が横行している。また、HTSによるシリア憲法草案では、「イスラム教を国教とし、他の宗教を尊重する」と書かれているが、イスラム教を国教とするのはシリアでは初めての出来事であり、他の宗教に対する信仰の自由の保証も曖昧に思える。


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