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ヒュー・スコフィールド、BBCニュース(パリ)
世界の美術館で最も訪問者数の多いフランスのルーヴル美術館は、改修計画の一環として、「モナリザ」を新しい展示スペースに移動することになった。
エマニュエル・マクロン仏大統領は28日、レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作の前に立ち、2031年までにこの変更を導入すると発表。その後は、同作品を見るためには別途料金がかかることを明らかにした。
「ヌーヴェル・ルネッサンス(新しい復興)」プロジェクトでは、訪問者数の増加による影響を緩和するため、美術館のガラスのピラミッドの下に第2の入口を設計する。マクロン大統領は、そのために国際的なコンペティションも行う予定だと述べた。
また、来年1月からは、欧州連合(EU)圏外(イギリスを含む)の居住者の入場料を変更するとした。
マクロン大統領のこの日の発表は、ルーヴル美術館のローランス・デ・カール館長からの警告に応えたもの。デ・カール氏は、美術館が深刻な過密問題と老朽化したインフラに苦しんでいると指摘していた。
今月初めに公開された政府宛ての書簡でデ・カール氏は、1989年以来、美術館への唯一の入場口があるピラミッドが、年間900万人以上の訪問者に「構造的に対応できない」と訴えた。
また、「モナリザの展示方法については、誰もが見直す必要があると考えている」とも指摘した。
1日3万人の訪問者の約4分の3が「モナリザ」を見ており、耐久試験のようになっている。同作品がある展示室サル・デ・ゼタは人混みが絶えず、絵を観察したり写真を撮ったりする時間は、平均して50秒間しかないという。
「一般の訪問者にはこの作品を理解するすべがない。これは私たちの公共サービスの使命全体に疑問を投げかけている」とデ・カール氏は書簡で述べた。
マクロン大統領のプロジェクトでは、人工の堀とあまり使われていない広場に面している、古典的な列柱で構成されている東側のファサードが再設計される予定だ。
また、新しい入り口からは中庭「クール・カレ」の地下にある新しい展示スペースに直接アクセスできるようになり、これがピラミッドの下のエリアと接続することになる。
マクロン氏によると、この新しい正面玄関は、40年前にフランソワ・ミッテラン大統領が行った「グラン・ルーヴル」計画以降で最大の変化だという。また、広場に木々が茂る「グリーンゾーン」を作るという、パリ市の計画と連携するものだと述べた。
一連の改修により、ルーヴル美術館を都市に統合し、「パリ市民に美術館を戻す」ことに役立つと、マクロン氏は述べた。
「モナリザ」を現在の位置から移動させることについては、この変更によって適切な展示が可能となるとともに、サル・デ・ゼタに展示されている「しばしば見過ごされがちな」他の傑作も見やすくなるとした。
計画では今後数年間でインフラを近代化し、新しいトイレやレストラン、休憩施設を設置するための大規模な改修工事も行われる予定だ。
これらの総費用は数億ユーロに上る見込み。
マクロン大統領は、このプロジェクトはチケット販売、寄付、およびアラブ首長国連邦(UAE)のルーヴル・アブダビとのスポンサー契約から資金をまかなうため、納税者に負担をかけることはないと述べた。
6カ月前に議会で過半数議席を失って以来、権限を大幅に制限されているマクロン氏は、自身のレガシーを確保するための新しい大義を模索している。
ノートルダム大聖堂の火災後の改修でリーダーシップを高く評価されたことが、ルーヴル美術館での同様の「グラン(壮大な)・プロジェクト」への意欲をかき立てたようだ。
(英語記事 Mona Lisa to be moved as part of major Louvre overhaul