自社の情報が流出しないようにしっかりと防衛することはビジネスの基本である。
日本企業は日本社会がそうであるように盗みにくる相手に対してはいささかガードが甘い。人を信用し性善説にたち、徳をもって感化するのは人間社会の理想ではあるが、産業競争は結果としての勝ち負けでそれまでのプロセスが評価されるため、理想だけではすまない。
隙だらけの日本企業
不正競争防止法は情報窃盗全般について規制している。例えばアクセス権限がないのに会社の重要情報をコピーし、私用のPCに送信するだけでも違法としている。海外に持ち出すと罰則を重くするような法改正も検討されている。しかし欧米では情報窃盗が非親告罪になっており、捜査当局が動いて捕まえたらすぐに公訴が可能なのに対し、日本では親告罪である。ということは企業自身が情報窃盗を自分で発見できるレベルで対策しなければならない。
外部から盗みにくることへの対策が最重要だが、日本企業内部から不用意な流出を防ぐことが先である。盗みに来られる前に自分が隙だらけでは話にならない。
退職者や転職者は、新しい仕事についたときに前職での会社の秘密情報と自分自身の持つ使える知識との区分けができていないことが多い。その場合、新興国企業に転職すると前職で得た情報を使って仕事をする。新興国企業の特許出願に表示される日本人発明者の名前を調べると前職のときとほぼ同じ内容の発明が多く見つかる。
特許出願では発明者の名前は神聖なので表示されてしまうのである。退職者に対し、日本企業が自社の秘密情報を守るにはどうすればいいか。それは退職時にその人がキャリアの中で接してきた会社の具体的な情報の項目を全て示し、それらは企業の秘密情報なので使えないと説明することである。退職者が重要な立場の技術者であればあるほど、本人のためにも間違いのないようにしてあげなければいけない。