ジョージーナ・ラナード BBC環境・科学担当編集委員
ブラジル・ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は23日、厳しい対立を経て、地球温暖化をもたらしている化石燃料に直接言及しない合意という形で終了した。
石油、石炭、ガスの使用中止に向けてそのペースを速めると、世界に約束させたいと望んでいたイギリスなど80カ国以上や欧州連合(EU)にとって、これは不満の残る結末だ。
しかし、産油国は、自国の化石燃料資源を利用して経済成長を実現する権利が自分たちにはあるという立場を崩さなかった。
国連は現在、工業発達以前からの気温上昇を摂氏1.5度に抑える世界的な取り組みが失敗したと懸念している。今回のCOPはそういう状況で開かれた。
コロンビアの代表は22日の最終会合だった全体会合で、各国が合意に異議を唱えることを認めないアンドレ・コヘアドラゴCOP議長を激しく批判した。
「コロンビアは、世界の温室効果ガス排出量の75%以上が化石燃料に由来するという十分な科学的証拠があると考えている」と、コロンビア政府のダニエラ・ドゥラン・ゴンサレス気候代表はBBCニュースに話した。
「だからこそ、気候変動枠組条約はいよいよ、その現実について語り始めるべきだと私たちは考えている」
「ムティロン」と呼ばれる最終合意は、化石燃料の使用を減らす行動を各国が「自主的に」加速するよう求めた。
今回初めて、アメリカはCOPに代表団を派遣しなかった。ドナルド・トランプ大統領は、各国に気候変動対策を義務づけた2015年の画期的なパリ協定から離脱すると表明したからだ。トランプ氏は、気候変動を「詐欺」と呼び続けている。
ベテラン交渉官のイェニファー・モーガン元ドイツ気候特使はBBCに、アメリカの不在は交渉に「穴」を開けたと話した。それまでアメリカはしばしば交渉で、EUやイギリスなどの国を支持する側に回っていたからだ。
「夜通し続く12時間の交渉で、産油国が強硬に抵抗する中、それに対抗する交渉担当がいないのは確かに厳しかった」とモーガン氏は述べた。
しかし多くの国にとって、交渉が決裂せず、過去の気候合意が後退しなかったことは、安心材料だった。
アンティグア・バーブーダのルレタ・トーマス気候大使は、「すべての国が声を上げられるプロセスが機能し続けていることをうれしく思う」と述べた。
サウジアラビアの代表は最終会合で、「各国はそれぞれの状況と経済に基づいて独自の道を築くことを、認められなくてはならない」と述べた。
他の多くの主要産油国と同様、サウジアラビアは他の国がこれまでそうしてきたように、自国の化石燃料資源の利用を認められるべきだと主張してきた。
今月10日から2週間にわたった協議は、時に混乱した。トイレの水が足りなくなり、豪雨で会場が浸水し、代表団は暑く湿度の高い部屋で対応に苦慮した。
COPの登録者約5万人は2度も避難する羽目になった。約150人の抗議者が警備線を突破して会場に侵入し、「私たちの森林は売り物ではない」と書かれたプラカードを掲げたのが最初だった。
20日には会場で大規模な火災が発生し、屋根が焼けて穴が開き、参加者は外に急いで避難した。
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領は、世界の注目をアマゾン熱帯雨林に集め、投資資金を呼び込むため、COP開催地にベレンを選んだ。
ブラジルははるかに野心的な化石燃料合意を望んでいたが、アマゾン河口での石油掘削計画で批判された。
環境保護団体「グローバル・ウィットネス」がBBCに共有した分析によると、ブラジルの沖合石油・ガス生産は2030年代初頭まで増加する見込みだ。
協議に参加した国々は、国の状況も気候変動の影響をどれだけ受けるかも抱える事情はさまざまで、それぞれに利害が異なる。一部の国は今回の結果に満足している。
インドはこの合意を「有意義」だと称賛した。小島嶼(とうしょ)国と低地沿岸国の利益を代表する39カ国のグループは、今回の合意を「不完全だが進歩への一歩」と呼んだ。
貧しい国々は、気候変動の影響に適応するための気候資金を増やすという約束を得た。
「針は動いた。(過去に多くの地球温暖化ガスを排出してきたため)歴史的な責任がある国々は、気候資金に関して具体的に義務があるという認識が、以前より明確になった」と、シエラレオネのジウォー・アブドゥライ環境・気候変動大臣は述べた。
しかし、化石燃料について強い文言を合意に残そうと夜通し交渉した80カ国以上にとっては、苦い結末だった。
イギリスのエネルギー・気候変動担当相エド・ミリバンド氏は、この会議は「一歩前進だ」と強調しつつ、「私としては、もっと野心的な合意を望んでいた」と話した。
「より多くを望んでいたし、あらゆることについて、より野心的でいたかった。私たちはそれを隠さない」と、EUのウォプケ・ホークストラ気候担当委員は記者団に話した。
青々とした木々、鳥の鳴き声、強烈な湿気……今回の交渉はアマゾンの間近で行われた。すぐそこに熱帯雨林が広がっているというのは、忘れようがなかった。
ブラジルはCOP30の冒頭で、熱帯林を保護する国々に資金を支払う新基金「トロピカル・フォレスト・フォーエヴァー・ファシリティ」を立ち上げると提示した。会議終了時までに、複数の政府から少なくとも65億ドルを集めたが、イギリスはまだ拠出していない。
90カ国以上が、森林破壊に対する世界的な計画、つまり「ロードマップ(行程表)」を求める呼びかけを支持した。
(追加取材:トム・インガムBBC気候変動担当記者)
(英語記事 UN climate talks fail to secure new fossil fuel promises)
