ウクライナのゼレンスキー大統領
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日、ロシアとウクライナの戦争終結に向けた和平案をめぐり、提案された修正版を歓迎した。ロシアに有利な当初の内容を認めず、ウクライナを支援する欧州各国が、修正版を作成したものとみられる。
もとの和平案は、アメリカとロシアの当局者らが10月に起草し、28項目からなる。21日にメディアに流出し、23日にはアメリカとウクライナの当局者らがスイス・ジュネーヴで、この案について協議していた。
この協議に参加したウクライナのセルギー・キスリツァ第1外務次官が英紙フィナンシャル・タイムズに話したところでは、当初の和平案はもはや存在しない。最新の計画は19項目からなる。領土の割譲など政治的に最も難しい要素のいくつかは、首脳同士で決めることになっているという。
この対案は、イギリス、フランス、ドイツが起草したものとされている。ロシアが支配しているウクライナ地域をロシア領土として承認するとの項目が省かれているほか、ウクライナの最大兵力を引き上げ、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟への可能性を残す内容となっているとされる。
ゼレンスキー氏はこの修正案について、「これで戦争終結に必要なステップのリストが実行可能なものになる」、「多くの正しい要素がこの枠組みに盛り込まれた」とメッセージアプリ「テレグラム」で述べた。
また、「本当に正しいアプローチ」と評価し、「微妙な問題、最もデリケートな点については、トランプ大統領と話し合う」とした。時期は示さなかった。
ロシアは「まったく非建設的」
一方、ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)はモスクワで記者団に、「欧州案は一見したところ(中略)まったく非建設的で、私たちの意向には沿わない」と述べた。
ロシア代表団は、23日にジュネーヴで開かれた会合に参加していない。クレムリン(ロシア大統領府)は、この会合での協議の結果について、何も情報を受け取っていないとしている。
こうしたなか、イギリスのキア・スターマー首相は、ウクライナを支援する欧州各国の「有志連合」の会議が25日に開かれ、事態の進展が協議されると発表。ウクライナの「公正で永続的な平和」のためには、まだやるべきことがあると述べた。
他方、米ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は24日、「アメリカがこの戦争を終わらせるため、両当事国と公平に関わっていないという考えがあるが、完全に誤りだ」と、米政権の立場について記者団に主張した。
また、ドナルド・トランプ米大統領について、戦争終結に向けた案がうまく作成されると「前向きに期待しているし、楽観視している」と述べた。
トランプ氏は、米ウ当局者のジュネーヴでの協議が終わった後、「もしかしすると何か良いことが起きているかもしれない」とソーシャルメディアに投稿していた。同時に、「見るまでは信じるな」とも書いていた。
欧州が急ぎ関与
ゼレンスキーはこれまで、和平案をめぐる「主な問題」は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、奪った領土について法的な承認を求めていることだと述べている。
先週ウクライナに提示された28項目の和平案をめぐっては、いくつかの要素が、ロシアの長年の要求に大きく傾いているとの見方が出ていた。
アメリカの和平案が表に出た先週の時点で、欧州各国は不意を突かれた格好となった。
トランプ氏は、ウクライナが27日までに和平案を受け入れなければ、アメリカからの支援が大幅に削減されるとうかがえる発言を重ねた。このため、対応を急ぐ必要があるとの空気がヨーロッパに広がり、ウクライナとアメリカの協議が急きょ設定された。
ロシアは一貫して、ウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州からなるドンバス地域から、ウクライナが完全撤退するよう求めている。ロシアは、クリミア半島と、ウクライナ南部のヘルソン州とザポリッジャ州の大部分も支配している。
ロシアは2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始した。以来、甚大な数の民間人と兵士が死傷している。
25日未明には、キーウのヴィタリー・クリチコ市長が、ロシアのミサイルとドローンによって市内の集合住宅が攻撃され、電力と水道の供給が妨げられたと述べた。
