先日、数十年ぶりに米西海岸サンフランシスコと学術都市でかつての留学先だったカリフォルニア大学バークレー校周辺を再訪した。9日間のセンチメンタル・ジャーニーだったが、どちらもIT革命発祥の地シリコンバレーとは指呼の距離だけに、市街地では無人タクシーが本格的に走り回り、バークレー・キャンパス内の学生ホールでは、工学部主催で世界各国の中学・高校生がそれぞれ自分たちで製作したロボットを持ち込んで競い合う「国際サッカー試合」が開催中だった。
頻繁に行き交うWaymo
「AI先進都市サンフランシスコ」――。国際空港に降り立ってすぐに”異変“を感じたのは、ターミナル内の不気味なほどの静寂さだった。
海外からの大勢の乗降客が出発カウンター、通関出入口を行き交う中、広々としたロビー、乗降口までの長い通路一帯では、日本で聞き慣れた搭乗ゲートや各エアラインの発着予定時間を知らせるかん高いアナウンスなどは一切ない。目に留まったのは、音もなく刻刻と変化する掲示板の数字や文字の点滅だけだ。
ほとんどの利用客は、歩きながら自分のスマホで最新情報を入手しており、掲示板前に立ち止まる人すらまばらだ。
レンタカーで市中心部に向かう混雑した公道でさらに驚かされたのは、天井から突き出た風車のようなレーダーを回転させながら走る奇妙な形のタクシーが何台も行き交う風景だった。昨年からサンフランシコ、ロサンゼルス、フェニックス、ラスベガスの一部都市で商業用に本格スタートしたばかりの自動無人運転タクシー「Waymo(ウェイモ)」だ。
中でもサンフランシスコでの普及ぶりはめざましく、すでに1000台以上が市内を走行しており、今年5月だけで利用客は13万5000人、1日平均4300人に達しているという。1台当たりの出動回数も平均14回と多忙だ。
