2025年12月12日(金)

トランプ2.0

2025年12月12日

落とし物にも対応

 翌日、早速、「Waymo」での行動を開始することにした。

 と言っても、ITやAIの時流に乗り遅れた私たち夫婦では勝手がゆかず、東海岸から一時休暇で合流してくれた次男にすべてを任せることにした。

 逗留先の一時借家にレンタカーを置き、玄関先でスマホの専用アプリに「出発地」「出発時間」「目的地」を打ち込む。市中心部から車で30分ほどの閑静な住宅街だったが、5分後には一時停車のライトを点滅させた指定の「Waymo」がスーッと姿を現した。

 「Hello, welcome!」――。車内のAIシステムが利用者本人であることを確認すると、ドアがアンロックされ、乗り込んで「シートベルト装着」の表示に従うと自動ロックされる。「ようこそ!」のアナウンスとともに座席前の「始動」ボタンを押し、ギアが切り替わり、いよいよ発車だ。

 定員は前部補助席1人、後部座席3人の4人乗りで、運転席に乗ることは許されず、ハンドルに手を触れることも「厳禁」とされている。

 イージー・リスニングの心地よい音楽が車内に流れ始める間もなく、縦列駐車の路肩からするりと一般道路に出て、住宅街を制限スピード範囲内で静かに走り抜け、時速60キロ前後の片側3車線の広い公道に入った。

 走り出すと、座席前の大き目の電光スクリーンに通過地点の現在位置、現時点の走行距離、途中の道路の混雑状況、「目的地」までの距離、到着予定時間が秒刻みで表示されるので、不慣れな旅行者にとっては便利この上もない。

 ほどなく車中で、助手席の次男が床部に落ちていた他人のクレジットカードを発見。運転手はおらずどこに届け出るべきが、ここは思案どころだ。

 だが、次男は迷わず車内のAI連絡システムでカスタマー・サービスを呼び出すと、すぐに自動音声サービスを通じ担当窓口の女性が応対に出てきた。事情説明を受けた相手は、すぐに以下のような丁寧な答えを返してきた。

 「わかりました。ありがとうございます。お客様を目的地までお送りした後、車はすぐに当社タクシー集合ターミナルに呼び返し、大切なカードを回収後、あなたより以前にお乗りいただいたお客様の手元に郵送でお届けします。よろしくお願いします」

 本部からリモコンで連絡を受けた無人車は次の客を乗せずに、そのまま帰着となるが、そこから先のカード回収と情報処理、所持者への物理的返却作業は、人間の仕事だ。

 途中いくつもの坂道、右折左折の曲がりくねった道路も難なくスムーズに通り抜け、「目的地」の市中心部憩いの広場「ユニオン・スクエアー」に到着したのは、渋滞の影響もあり、出発から35分後だった。

Waymoに乗車した筆者

 スクリーンに「You are here(到着)」の表示が点灯し、あとはシートベルトを外してドアを押しゆっくり下車するだけ。料金は、出発前にスマホで呼んだ際に、利用者側のアカウントに自動請求されるので、その場でドル札を出す必要もない。

 乗り心地も、走行中、突然のハンドルさばきや急ブレーキもなく、終始静かで安心でき快適そのものだった。


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