2025年12月13日(土)

韓国軍機関紙『国防日報』で追う

2025年12月13日

 韓国は尹錫悦前大統領による非常戒厳宣布から1年を迎えた。李在明大統領は「国民の偉大な勇気と行動を称えるため」に12月3日を「国民主権の日」に指定すると宣言したが、安圭伯国防長官が進める軍の刷新・改革は思うように進んでいない。一方で国防部は過去最高の増加率となった2026年度国防予算が確定したと発表した。

「軍再建」は大きな矛盾

 2024年12月3日深夜、尹錫悦大統領(当時)による非常戒厳宣布は、韓国のみならず世界に大きな衝撃を与えた。国会議員たちが軍の封鎖を突破して本会議場に駆け込み、わずか数時間で戒厳解除を決議する光景は、民主主義の勝利として世界に報道された。

 この「ソウルの夜」は深刻な政治的混乱を引き起こし、尹大統領の弾劾、そして野党指導者だった李在明氏の大統領就任へとつながった。安圭伯国防部長官は非常戒厳1周年を前に軍の「内乱関与」を公式謝罪し、「憲法的価値を守護する国民の軍隊」への再建を宣言した。

 しかし、この「軍再建」路線には根本的な矛盾がある。非常戒厳時、軍は最高指揮官である大統領の命令に従っただけだ。軍の指揮命令系統では、指揮官の命令への服従が絶対的な前提となっている。にもかかわらず、政権交代後、軍を批判と刷新の対象とするのは、明らかなご都合主義ではないか。

全軍主要指揮官会議(国防部HPより) 写真を拡大

 安長官は3日の全軍主要指揮官会議で「反面教師なしに軍の再建は不可能」と述べ、1961年の朴正煕による5・16クーデターや、79年の全斗煥による12・12クーデターなど過去の軍事介入と同列に扱う。だが、いずれの事件においても将兵は自ら政治的野心を持って行動したわけではなく、指揮命令系統に従っただけだ。安長官は「無実の兵士の胸に深い傷を残した」と指摘するが、傷は現政権による政治的報復によって深まったのではないか。

 現在、韓国軍では一線の部隊においても憲法教育が行われているが、安長官自身が認めるように改革は「一進一退」だ。その原因は、政治的な価値観を軍に持ち込んでいるからに他ならない。


新着記事

»もっと見る