命令に従った軍人を「内乱加担者」として糾弾する姿勢では、士気の回復どころか、将来の危機に軍が適切に機能するかという新たな懸念すら生じる。そして忘れてはならないのは、韓国軍は同じ民族であり、かつ情報活動や工作活動に長けた北朝鮮と対峙しているということだ。
新政権で膨張する国防予算の意味
国防部は12月3日、2026年度国防予算が65兆8642億ウォン(約7.5兆円)に確定したと発表した。前年比7.5%増、20年以降最高の増加率である。
韓国の会計年度は1月から12月。憲法の規定に基づき政府は9月3日までに次年度予算案を国会に提出し、国会は12月2日までに議決する。今回の発表は、非常戒厳宣布後の政治的混乱を経て、予算審議が法定期限内に完了したことを誇らしげに示すものだ。これ自体が「国政正常化」の象徴として位置づけられている。
予算の内訳を見ると、新政権の優先順位が明確だ。戦時作戦統制権転換に向けた防衛力改善費は19兆9653億ウォン、中でもキルチェーンなど韓国型3軸体系予算は21.3%増の8兆8387億ウォンと大幅に増額された。
特筆すべきは先端技術への傾斜だ。国防AX(人工知能転換)関連では民間AI技術活用のため350億ウォン、軍・産・学協力センター構築に195億ウォンが新規計上された。「50万ドローン戦士養成」事業も当初案から6割増の330億ウォンに拡充された。
政府が掲げる6つのキーワード――文民長官、予算増額、原潜推進、自主国防、緊張緩和、多極外交――は、一見すると矛盾を含む。64年ぶりの民間人の国防長官就任で文民統制を強調する一方、原子力潜水艦建造承認や防衛産業4大強国という野心的目標を掲げる。対北拡声器撤去で緊張緩和を演出しながら、過去最大規模の国防予算を計上することも矛盾の表れだ。
これは、トランプ政権からの国防費増額要求と朝鮮半島の緊張緩和という新政権が直面するジレンマを反映している。
