世界の映像界が2026年に向こうとしている時、Netflixがハリウッドのビッグ5の一角を占めるワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)の映画事業と配信事業を買収するニュースは衝撃だった。映像の主役が映画会社からネット配信会社に移る歴史的な瞬間である。
日本のテレビ業界もこうした潮流から逃れられないのを自覚しながら、優良のコンテンツを制作する方向性がはっきりとした1年でもあった。今シーズンのキー局のドラマの数々は傑作が勢ぞろいした感がある。そして、いずれも国内ばかりではなく、Netflixを通じて世界配信されていることは偶然ではない。
『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS、脚本・喜安浩平)や『終幕のロンド―もう二度と、会えないあなたに―』(関西テレビ、脚本・高橋美幸)、『ぼくたちん家』(日本テレビ、脚本・松本優紀)、『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ、脚本・三谷幸喜)。いずれも甲乙つけがたい傑作である。あえて、群像劇の傑作『ザ・ロイヤルファミリー』を取り上げたい。
有馬記念の勝利を夢見る馬主
我らがスター・目黒蓮が出演する『ザ・ロイヤルファミリー』はついに「最終章」を迎えている。「スター」とは存在そのものである。あえて、異分野から野村克也語録の「エースと四番バッターは創れない」を引用したい。
大ヒット映画『国宝』(李相日監督)と大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK、脚本・森下桂子)の横浜流星と並んで、日本の20歳代の男性スターをほかに知らない。
「ロイヤルファミリー」は競走馬の名前である。人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」の社長である山王耕造(佐藤浩市)は馬主であり、競馬の重賞レース(G1)とくに年末の「有馬記念」で優勝することを夢見ている。
競走馬のそれまでの成績に加えて、競馬ファンの人気によって出走馬が決まる。「年末に夢を見られるのがいい」と、耕造は願いを込めている。
