オルタ・インタ将軍(中央)がギニアビサウの暫定大統領に就任した
西アフリカのギニアビサウで26日、クーデターと見られる事態が発生し、陸軍のオルタ・インタ将軍が翌27日、暫定大統領への就任を宣言した。この政変をめぐっては、拘束されたウマロ・シソコ・エンバロ大統領(53)が、23日にあった大統領選挙の結果発表を目前に、「偽装クーデター」を謀ったとの見方も出ている。
前日まで大統領警護隊長だったインタ氏は、27日に軍本部であった宣誓式に臨んだ。式の最中も将校たちに囲まれてカメラの前で立つ間も、ほとんど笑顔を見せなかった。
暫定大統領の任期は最大1年。
この前日の26日、軍将校グループは、国家権力を掌握したと発表した。これに先立ち、政府筋はBBCに、エンバロ氏が拘束されたと説明していた。
首都ビサウでは銃声が聞かれた。誰が発砲したのか、死傷者がいるのかなどは明らかになっていない。
その後、将校らは国営テレビで、大統領選の手続きを停止したと発表。「有名な麻薬王の支援を受けた」政治家が国を不安定にするのを阻止するための行動だと主張した。また、国境を閉鎖し、夜間外出禁止令を出したとした。
大統領選をめぐっては、27日に結果が発表される予定だった。エンバロ氏と、ライバルのディアス氏の双方が、勝利を主張していた。
エンバロ氏は26日午後、仏ニュースチャンネルのフランス24の電話取材に対し、「私は権力の座から追放された」と話した。
AFP通信が匿名の軍関係者の話として伝えたところでは、エンバロ氏は軍参謀本部で拘束され、「丁重な扱いを受けている」という。
政府筋はその後、BBCに対して、ディアス氏、ドミンゴス・ペレイラ元首相、ボチェ・カンデ内相も拘束されたと述べた。また、ビアグ・ナ・ンタン陸軍参謀総長とママドゥ・トゥーレ副参謀総長もクーデター勢力によって拘束されたとした。
「偽装クーデター」
ギニアビサウの市民団体の一部は、今回の事態について、エンバロ大統領が軍の協力を得て、自分に対する「偽装クーデター」を画策したとしている。同国では23日に大統領選挙があったが、エンバロ氏がそれに敗れた場合に備え、結果公表を妨害しようとしたとの見方だ。
市民社会連合の「人民戦線」は26日の声明で、「今回の策略は、明日11月27日に予定される選挙結果の公表阻止を目的としている」と主張した。
大統領選でエンバロ氏の最大のライバルだったフェルナンド・ディアス氏も、同様の発言をしている。
エンバロ氏は、こうした疑惑に対しコメントしていない。
同氏はこれまで、在任中に複数のクーデター未遂を生き延びてきたと話している。だが、同氏に批判的な人々は、同氏が反対派を弾圧する目的で危機をでっち上げてきたと非難している。
エンバロ氏は今回の大統領選で、同国では過去30年間で初となる、2期連続当選を目指していた。
大統領選をめぐる動きは、軍が既に停止させている。27日に予定されていた大統領選の結果発表も止められている。
アフリカ連合(AU)のマフムード・アリ・ユスフ委員長は、ギニアビサウでクーデターが起きたとみられるとの報道を受け、「エンバロ大統領および拘束された全関係者の即時かつ無条件の解放」を要求した。
また、同国の指導層に対し、「進行中の選挙プロセスを尊重する義務」があると強調した。
西アフリカのセネガルとギニアに挟まれたギニアビサウは、麻薬密輸の拠点として知られる。1974年にポルトガルから独立して以来、軍が影響力を持ち続けている。
ギニアビサウでクーデターまたはその未遂が起きたのは、過去50年間でこれが少なくとも9回目になる。
AFP通信によると、27日時点で、ギニアビサウの国境は再び開かれている。
ギニアビサウは人口200万人超で、世界最貧国の一つ。沿岸に無人島が多いことから、麻薬密売組織にとって理想的な拠点となっており、国連も同国を「麻薬国家」と呼んでいる。ラテンアメリカからヨーロッパに密輸されるコカインの主要な中継地となっている。
(英語記事 General named new Guinea-Bissau leader a day after coup)
