2025年12月13日(土)

BBC News

2025年12月2日

ダニエル・ケイ・ビジネス記者

米スターバックスは1日、ニューヨーク市での労働環境をめぐって市当局と和解し、補償金として従業員に3500万ドル(約54億円)超を支払うことで合意した。

市当局は、同社が市内の従業員数千人に安定した勤務スケジュールを与えず、勤務時間を恣意的に削減したと主張。被雇用者が予測できる勤務スケジュールの提供を雇用主に義務付ける、市の「フェア・ワークウィーク法」に違反した疑いを指摘していた。

スターバックスは全米で、労働環境の改善を求める圧力に直面している。

この和解により、2021年7月~2024年7月に市内のスターバックスに勤務した時間給労働者1万5000人以上が、勤務した1週につき50ドルを受け取る。

スターバックスはさらに、民事制裁金などとして340万ドルを支払う。

合意の条件に基づき、スターバックスは今後、市の「フェア・ワークウィーク法」の順守を義務付けられる。この法律は、ファストフード業界の雇用主に対し、従業員に規則的な勤務スケジュールと追加シフトに入る機会を与えることを求めている。

スターバックスは声明で、「小売業界で最高の職場をつくり、すべての法律に従うよう業務を確実にすることに尽力している」と述べた。また、店舗の人員配置と研修の改善に向けた5億ドルの投資計画を示したと付け加えた。

一方で同社は、ニューヨーク市の労働者保護法は「複雑だ」と指摘した。

「私たちは法律の趣旨を支持し、順守に引き続き尽力するが、その複雑さが現実的な課題を生んでいる」とスターバックスは述べた。また、ニューヨーク市で働く従業員への補償は、未払い賃金ではなく、法令順守のためのものだと説明した。

市当局は、2022年にスターバックスの調査を開始した。この調査は、数十件の労働者からの苦情をきっかけに始まり、市内すべてのスターバックス店舗を対象に拡大した。

同市の消費者・労働者保護局は声明で、「体系的な違反のパターン」を確認したと述べた。スターバックスは2021年以降、市のフェア・ワークウィーク法に50万回以上、違反したとされている。同局は今回の合意を、市の歴史上最大の労働者保護に関する和解だと説明した。

同局のヴィルダ・ヴェラ・マユガ局長は、「すべての労働者は尊厳をもって扱われるべきだ。スターバックスのような数十億ドル規模の企業が、従業員の権利を体系的に侵害することを選ぶ場合、市が地域の人々のために立ち上がることを誇りに思う」と述べた。

ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は、今回の合意を「画期的な和解」と呼び、「数千万ドルを勤勉なニューヨーク市民の懐に戻し、すべてのニューヨーク市民に信頼できる勤務スケジュール、十分な勤務時間、そして基本的な尊厳を保証するものだ」と述べた。

従業員のスト続く

スターバックスは近年、消費者による不買運動、新興競合の波、高価格に対する顧客の反発、そして経営陣の混乱に直面してきた。

同社はブライアン・ニコル最高経営責任者(CEO)の下、顧客を呼び戻すため、より迅速なサービスと、陶器製マグカップや手書きのメモを用いたコーヒーハウスの原点回帰を約束している。今年10月には、1年以上営業している世界の店舗で売上高が1%増加したと報告。約2年ぶりの四半期増収となった。しかし、アメリカ国内では売上高は横ばいだった。

増収に向けた最近の動きにもかかわらず、同社は依然として長年の労働争議に苦しんでおり、これが業績回復を妨げる恐れがある。スターバックスは、賃金や人員配置、数百件の未解決の不当労働行為に関して、アメリカ国内の従業員が組織する労組「スターバックス・ワーカーズ・ユナイテッド」と対立したままだ。

交渉が行き詰まった先月、同労組に所属する労働者らは、賃金と人員配置の改善を求めてストライキを実施した。

ニューヨーク市当局がスターバックスとの合意を発表した1日、同労組に加入しているバリスタの一人、カイ・フリッツ氏は声明で、「この会社が私たちの勤務時間を減らし、店舗の人員を不足させ、労組をつぶそうとする時、私たちが仕事をこなし、顧客に素晴らしい体験を提供することが難しくなる」と述べた。

「今回の和解は正しい方向への一歩だ」とも、フリッツ氏は話した。

スターバックス・ワーカーズ・ユナイテッドによると、従業員のストは続いており、85都市の120店舗以上に拡大している。同労組は4年前の設立以来、アメリカ国内の同社直営店舗の約5%で、労働者を代表して経営側と団体交渉するための代表選挙に勝利している。

米・カナダの労組「ワーカーズ・ユナイテッド」のリン・フォックス国際会長は声明で、数千人の労働者が「雇用保護、より良い人員配置、賃金引き上げを明記した公正な労組契約」を求めてストライキを続けていると述べた。

「スターバックスはあまりにも長い間、スケジュールを操作し、労働者を軽視し、ニューヨーク市民が不公正な企業慣行から労働者を守るために制定した法的保護を無視するなど、何の責任も負わずに行動してきた」

(英語記事 Starbucks to pay NYC workers $35m after alleged labour law violations

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c9d9j696jv7o


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