2026年10月8日(木)

Wedge OPINION

2026年10月8日

 こうして、経済の崩壊で収入の道が閉ざされ、継続する内戦とも相まって、国民の多くが深刻な経済的困難に直面している。国連の統計によれば、ミャンマー人口5000万人のうち、360万人が内戦による国内避難民となり、半数に近い2500万人が貧困ラインでの生活を強いられている。日本からはとても想像できない現状である。国境を接するタイには、安全な場所と収入を求めて脱出した500万人以上のミャンマー人が滞在している。全国民の1割に相当することを見れば、事態の深刻さは明らかである。

 それにもかかわらず、大統領は貿易赤字が物価高騰の原因だとして、輸入制限や外貨管理をさらに強化していくと繰り返し述べている。経済状況やビジネス環境の一層の悪化は必至である。

中国・ロシアの接近
交錯する国際社会

 スー・チー氏率いる政権のもとでミャンマーとの関係を深めていた国際社会は、クーデター後、軍事政権に厳しく対峙してきた。欧米は制裁を科し、日本は政府開発援助(ODA)の新規供与を停止した。政府承認も控え、24年に筆者が離任した後は後任の大使を派遣せず、臨時代理大使のレベルにとどめている。

 これと対照的な動きを示しているのが、中国とロシアである。中国にとってマラッカ海峡を経由せずにインド洋へ直接アクセスできるミャンマーの存在は、国家安全保障上、死活的に重要であり、今後インド洋に面した場所に深海港を建設する予定である。ロシアもまた、ミャンマー南部の町ダウエーに深海港を建設することで合意している。中国とロシアがインド洋に面した場所に自由に使用できる港を持つこと──これがエネルギーの大半を中東に依存する日本の安全保障に与える影響は、非常に大きい。

 一方、米国のトランプ政権は、イランやウクライナの問題には深く関わるものの、東南アジア、なかんずくミャンマーには無関心とも言える対応に終始し、結果として中国とロシアの台頭を許している。


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