開発の機運が全く止まってしまえば、業界全体が崩壊するだけでなく、世界恐慌の引き金にもなりかねない。また、トランプ大統領らが指摘するように、アメリカの研究開発体制だけに急ブレーキがかかるようでは、中国が一気に先行してしまう可能性もある。
この時期に広がった2つの要因
こうした危険性から考えると、「この2026年9月」というタイミングには絶妙な意味合いがあったと見ることが可能だ。
1つは、現在進行形で動いている、AIに関する「ビッグ3」の上場問題がある。現時点では、まずAIだけでなく宇宙航空も衛星ネットなどもカバーする「スペースX」がいち早く上場を果たした。とにかく上場直後はブームになって、最高値としては225ドル強という水準まで上昇、しかしながらその後は内部関係者の売りがあって100ドル近辺まで下がった後は、140ドル前後で停滞している。
また、株式市場全体としては決して元気のいい感じではなくなってきているのも事実だ。その一方で、株だけでなく、債券も動きに変調が生じてきた。米国債の金利上昇がかなり顕著になっており、つまりは価格が下落している。その一方で、インフレも状況が悪化した。
そんな中で、9月16日に米連邦準備理事会(FRB)のウォーシュ議長は金利アップを決断した。いずれにしても、米国債はジリジリ下げており、株価もパッとしない……どころか、暴落の危険を常に感じるという綱渡り状態になっている。暴落については、例えば不動産市場が暴落するとか、円の大暴落と米国債売りが発火点になるとか、色々なことが言われている。
その米国の株式市場では依然として「AI頼みの相場」が続いている。AIのビッグ3の上場は未完成で、アンソロピックとオープンAIについては上場日が流動的となっているが、その動向が市場全体に大きく影響している。
エヌビディアなど、AIインフラ関連の株も依然として市場の牽引車である。そんな中で、AI開発に急ブレーキがかかれば、AI相場は止まるかもしれない。
そんな中で、残る2社の上場を止められるのかというと、これは難しいであろう。どうしてかというと、現在はどんどん先行投資が加速しており、そのキャッシュについて、当面は「ノンバンク・ファンド」など高金利のファイナンスで回しているからだ。しかも、金利が上がる中では、こうしたファンドの調達コストも上がりつつある。
この点から考えると、アンソロピックもオープンAIも「できるだけ早く上場したい」ということになる。いつまでもノンバンクの融資に頼っていては、いずれ限界が来てしまうからだ。では、今すぐ上場したら良いのかというと、これも難点がある。市場にそこまでの余力があるのか、どうも怪しいからだ。
市場環境が良くないのに、そしてスペースXの株価が十分に上昇に転じていないのに、強引にアンソロピックとオープンAIが上場するのはリスクとなる。具体的には、(1)上場価格の低迷の可能性、(2)上場には成功してもその後の市場全体の暴落、というようなシナリオになっては困るからだ。
本音の部分としては、利上げで多少景気が冷えて、それから中東が静かになって物価が落ち着いた状態を待ちたいのだ。もっといえば、中間選挙が終わって「政治の季節」が一段落し、尚、市場環境が許すのならそんな中で上場を成功させたいのかもしれない。
その場合は、資金調達もスローダウンするから、開発スピードもスローダウンしなくてはならない。一方的にスローダウンしたら開発競争に負ける。それは困るので、業界全体として少しだけ開発をスローダウンしたい、という意識はあるのだと思われる。コクソン発言は、そこに「うまくハマった」という評価は可能だ。
