ロシアは秘密裡に、シリアのフメイミーム空軍基地を利用する協定を締結。さらにロシアとイランはシリア、イラクとともに共同作戦を展開するための拠点をバグダッドに設置した。
そしてロシア軍幹部が指揮を執り、シリアの情報機関やイラン革命防衛隊が連携して反政権勢力に対する反撃を本格化させた。この作戦によりアサド政権は息を吹き返し、ロシアはシリアを中東における橋頭保とすることに成功した。
自爆型ドローン「シャヘド」提供
ロシア・イランの結びつきを決定的にしたのが22年2月に始まったウクライナ侵攻だ。侵攻開始当初は数日で首都キーウを陥落できると予想したロシア側の狙いは大きく崩れ、ウクライナ側の激しい反撃によりロシア軍の軍事的優位性が各地の前線で失われていった。
当初の反転攻勢で勢いに乗るウクライナに冷や水を浴びせたのがイラン製の自爆型ドローン「シャヘド」だ。シャヘドは多くの前線に投入されただけでなく、都市部などの民間施設への攻撃にも繰り返し利用され、ウクライナ国民の士気をくじいた。シャヘドは当初はイランからの輸入で調達されたが、その後ロシア中部タタルスタン共和国の工場で現地生産が始まった。
兵器がひっ迫するロシアに対し、イランはさらに砲弾や戦車などを提供したと報じられたほか、24年9月にはイランがロシアに対し、短距離弾道ミサイルを供給したと米政府が発表。欧米や日本など主要7カ国(G7)は「可能な限り最も強い言葉で非難する」とイランを激しく糾弾したが、その後もウクライナ侵攻をめぐりイランはロシアを支える姿勢を鮮明にしている。
米国には慎重姿勢
両国がこのような相互協力を繰り返す中で26年2月に始まったのが、米国・イスラエルによるイラン攻撃だ。ロシア外務省はすぐさま「主権を有する独立した国連加盟国に対する、計画的かつ挑発のない武力侵略行為」として米・イスラエルを非難し、軍事作戦の即時停止を要求した。衝突が依然として終わらない中、9月に開催された上海協力機構首脳会議でプーチン氏がイラン寄りの姿勢を鮮明にしたのは当然の結果だった。
一方でロシアにとり、ウクライナの最大の後ろ盾となってきた米国のトップであるトランプ大統領が、依然としてウクライナ侵攻の成否を左右する最重要人物の一人であることは変わりがない。そのためプーチン氏は米国によるイラン攻撃を非難しつつも、トランプ氏個人に対する批判は表立っては行っていない。イラン側に最大限の恩を売りつつ、トランプ大統領との決定的な対立には陥らないよう慎重に対応を進めている実情が浮かび上がる。
ただ冒頭の論考にあるように、ロシアはそもそも、米国によるイランに対する攻撃を失敗とみている可能性が高い。いずれ米国がイランとの対立で行き詰まることを念頭に置きながら、最大限の利益を得ようとするプーチン氏の冷徹な姿勢がロシアの対応からは見えてくる。
