2026年10月7日(水)

解剖:「大きな政府」を好む日本

2026年10月7日

 「経世済民」とは、「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」と読む。世の中を治め、人々を苦しみから救うという意味である。

 もっとも、この四字熟語がそのまま中国古典の一節として現れるわけではない。東晋の葛洪が著した『抱朴子』には、ほぼ同じ意味を持つ「経世済俗」が見られる。その後、「経済」は世を治め民を救う政治を意味する言葉として使われ、日本では江戸時代の太宰春台が『経済録』で「凡そ天下国家を治むるを経済と云、世を経め民を済ふ義なり」と説いた。

 今日の「経済」は生産、消費、雇用、物価などを指す言葉になったが、その源流には一つの明確な価値判断がある。

(首相官邸ホームページより)

経済は民のためにある

 高市早苗首相は、2026年10月5日の所信表明演説で、「私が貫く志は、『経世済民』です」と宣言した。政府の財政支出を呼び水として民間投資を増やし、潜在成長率を高め、雇用、所得、税収の増加へつなげる。そうして労働者、子育て世代、高齢者らが未来に希望を持てる社会をつくるという構想である。

 所得を増やし、物価高に苦しむ家計にゆとりを取り戻す。その目的は妥当である。問題は、その目的を国家主導で実現しようとする政策の順序にある。

 政府が投資先を選ぶ。政府が財政資金を投じる。政府が企業の投資を誘導する。そこから成長が生まれ、その成果が国民生活に届く。高市内閣が描くのは、こうした国家主導の筋書きである。

 これは経世済民というより、国家による済民である。


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