2026年10月17日(土)

コメと日本人

2026年10月17日

 「米は地力でとる」という言葉がある通り、稲作にとって土は重要だ。土壌学者が「令和の米騒動」を受けて、日本の稲作の未来について考える。電子書籍「コメと日本人」の内容を一部、限定公開いたします。

  あれほど安かったコメの価格高騰が続いている。数年前まではコメ余りと米価下落が農業関係者の悩みだった。1960年代には毎日お茶碗5杯分を食べていた日本人が、今やたったの1日1〜2杯しか食べなくなったためだ。

広島県北広島町壬生で行われる「壬生の花田植」。豊作祈願と田植え作業を楽しくするものとして始められた(TAKASHI SATO/AFLO)

 食の多様化は、コメの需要を毎年10万トンずつ減らしてきた。そのコメが足りない。マスコミは犯人を探した。政府、農協、その他流通業者、インバウンド……。

 システム全体の問題に違いなかったが、過熱した報道は消費者にも伝わり、「令和の米騒動」と呼ばれる事態を招いた。生産現場にも関心が向くことを期待したが、テレビの話題はイネや土よりも政治や農協だった。

 そもそもコメは、モチの弾力性とは裏腹に需要・供給の変動に対して価格が上昇しやすい(弾力性が低い)といわれ、コメの供給が1%低下すると、米価は6%増加するという経験則がある。

 コメの流れは縁故米などのために実態把握が難しいが、例年並みという作況指数とは裏腹に、実際は不作だった。供給される絶対量が数十万㌧レベルで足りていなかったのだ。不作の直接的な原因は猛暑・渇水や精米歩留まりを悪くしたカメムシ害だが、不運で片付けるのは違う。

米価低迷の中で
後回しになった土作り

 過疎化・高齢化、燃料・肥料価格の高騰に対してズルズル低下し続けた米価の問題、結果として後回しになる土作り。生産現場が直面してきた慢性的な課題は、店頭の米価高騰のようには注目されず、改善されてこなかった。

 農家はここ60年で10分の1に減少し、消費者から生産者は遠くなった。国内総生産(GDP)の主産業が農業から工業へと移行し、農業は生産量よりもコスト削減を求められるようになった。

 消費者は、お米にも量よりも質(味)を求めた。肥料を増やして増収を目指す世界的トレンドから外れ、窒素肥料を減らし、タンパク質の少ない甘い米の品種が好まれた。コシヒカリやあきたこまちが代表的だ。窒素肥料を多くすれば倒伏しやすい品種となる。


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