2026年10月17日(土)

コメと日本人

2026年10月17日

 「もっと余裕をもって作っておけば良かったのに」という声や「減反政策が悪かった」と、今になって過去の政治責任を問う声もあるが、需要が減少する中で価格暴落を防いできた意義は無視できない。私たちが口にしているシャインマスカットの多くは、減反政策をきっかけにブドウ栽培に転換した農家が排水の悪い土を改良した努力の賜物である。

 そう簡単に増やしたり減らしたりできないのが水田というインフラである。それでもコメ不足を受けて国は再びコメ増産に舵をきった。「米は地力(=土の生産力)でとる」という言葉がある。今度こそ土の出番である。

 水田稲作は日本の風土に合ったがゆえに数千年も続いてきた。畑作では肥料なしに収穫を続けると劇的に収穫量が落ちる。ところが、水田稲作はリン酸肥料なしでも5割程度の収穫量が見込める。

 これは土が還元的になることで酸化鉄が溶け出し、吸着していたリン酸が解放されるためだ。化学肥料のほぼすべてを輸入に依存するわが国において、水田稲作は食料安全保障そのものである。

 水田には他にもメリットがある。微生物が酸欠状態になって分解活動が低下することで腐植が蓄積し、土が肥沃になる。日本の土はもともと酸性だが、山から流出するカルシウムを海に流す前に回収し、土を中和できる。土壌侵食が少ない。畑地雑草を抑える。連作障害がない。良いことずくめである。

 世界の耕作面積に占める水田の割合は1割に過ぎないが、世界人口の5割の主食となっている。水田農業は高い生産性と安定性によって、アジアの巨大人口を扶養する持続性の高い生産システムとなってきた。

 稲は熱帯性の作物であり、日本は北限に近い。大河の季節的な氾濫と広大な沖積平野を利用した東南アジアの稲作に比べると、日本の狭い平野は決して栽培適地ではない。

 それでも、ど根性の土木事業によって作り上げた用水路は総延長40万キロ・メートルにもなる。地球から月まで到達する距離だ。水田には、重労働を上回る魅力があった。

乾田直播、中干し延長
という試み

 水田にも悩みがある。

※こちらの記事の全文は電子書籍「コメと日本人」で見ることができます。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る