2026年10月10日(土)

プーチンのロシア

2026年10月10日

 14世紀に欧州で数千万人の命を奪った「黒死病」(ペスト)をめぐり、世界の注目がシベリアの小さな街に注がれている。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、ロシア・イルクーツク州のペスト対策研究所の女性研究員(28歳)が「原因不明の肺炎」で亡くなった事案について、ロシア政府に情報提供を求めた。

女性研究員が「原因不明の肺炎」で死亡したペスト対策研究所(AP/アフロ)

 当初、地元メディアは「実験室での事故で肺ペストに感染した可能性」を報じたが、調査に入った露当局はこれを否定。にもかかわらず、2例目のペスト感染事例の未確認情報があるほか、ペストの脅威を恐れた隣国、カザフスタン、キルギスなどは感染症の流入を警戒して国境での予防措置の強化を続けている。いったい、何が起きているのか?

当局は情報を統制

 事案は東シベリアの中心都市イルクーツクに近い人口4万人の工業都市、シェレホフで起きた。この街にあるイルクーツク・ペスト対策研究所に勤める若手研究者、ダリア・シピロワさんが10月1日から2日にかけて入院先の病院で急死した。

 ロシア当局が情報統制を敷いているのは確かである。シピロワさんが死亡した直後にあらゆるメディアで「ペスト疑い」による死亡情報が流れたのだが、次々に削除されていったからだ。近隣自治体のバイカリスク市当局は非公式情報をもとに、公式サイトに住民にシェレホフに近づかないよう呼びかける情報を流したのだが、この情報は投稿2時間後に削除されたのが確認されている。

 報道規制が不確かな情報の拡散によるパンデミック・パニックを抑制するための策であることは理解できるが、ソ連時代から「臭いものに蓋」をしてきた国家の隠ぺい体質や、ウクライナとの戦争の事例を見ても詳細な情報を公表しない現政権への不信感が、疑惑と脅威の拡大に拍車をかけている。

 事態を検証するため、発生当初から関係者や地元住民らに取材を続けている独立系メディア「バイカルの人々」の情報をもとに、発生の経緯や事実関係を振り返りたい。


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