2026年10月18日(日)

Wedge REPORT

2026年10月18日

 イタリアンレストランを展開するサイゼリヤが8割超の商品を29日から、平均6%値上げすると発表した。本格的な値上げは1999年の上場以来、初めてという。

(tyak_factory/gettyimages)

 「定番商品」のミラノ風ドリアが税込みで300円から320円とし、400円のメニューは420~430円となる。レジャー施設周辺・都市部の一部店舗24店舗は、平均10%の価格改定とする。

 同社は「努力不足により、食材の不足や原価上昇を吸収できない事態が発生しております」とコメントしているが、SNSなどでは「今までありがとう」といった受け入れの姿勢を見せる声も多い。

 値上げは今や一概に「悪」ではなく、どう行うか、どう伝えるかといった経営戦略の一環となっている。価格に関する記事5本を紹介する。

〈目次〉

・浅草の「パンのペリカン」に人が集まる理由、消費者は単に安いものばかりを求めているのではない!実質賃金が下がる中で値上げするには?(2026/03/05)

・日本は「安さ」で選ばれる国に向かうのか?飲食料品の消費税減税で起こるサービス・観光業の変動、家計支援の先にある価値創造戦略(2026/06/11)

・「物流2024年問題」は物流コストにどんな影響を与えたのか?物価上昇と比較して見えてくる“現実”、価格転嫁はできているのか(2025/08/01)

・〈解説〉値上げしても売れる!日本マクドナルドの価格戦略、既存店は売上・客数・客単価の全てが上昇、「値上げの春」に持つべき視点(2025/04/02)

・新米1俵が1年間で2万円も下落!なぜ、コメの価格はこれほどまでに乱高下するのか?(2026/09/15)

浅草の「パンのペリカン」に人が集まる理由、消費者は単に安いものばかりを求めているのではない!実質賃金が下がる中で値上げするには?

(Hakase_/gettyimages)

 スーパーの棚の前で、ふと立ち止まる。いつも家族が好きで買っている菓子を手に取る。値段は以前と同じだ。

 ほっとしかけたその時、裏面表示に目が留まる。内容量が減っている。箱の大きさは変わらないのに、個数が一つ少ない。あるいは、数グラムだけ軽くなっている。

 ほんのわずかな違いだ。だが、その事実に気づいた瞬間、胸の奥に小さな違和感が広がる。

 「仕方がない」と頭では理解している。小麦は上がり、砂糖も油も値上がりし、物流費や電気代も上昇している。企業が苦しいことも想像できる。

 それでも釈然としない。価格はそのままで、中身だけが静かに変わっている。説明もなく、知らせもなく……。

 残るのは納得ではなく残念さだ。金額以上に、「知らされなかった」という事実がじわりと信頼を削っていく。

 近年頻発するステルス値上げは、単なる価格調整ではない。企業と消費者の関係性を映す鏡のような出来事である。目に見えない小さな変更が、目に見えない心の距離を生む……

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日本は「安さ」で選ばれる国に向かうのか?飲食料品の消費税減税で起こるサービス・観光業の変動、家計支援の先にある価値創造戦略

(Fascinadora/gettyimages)

 政府が飲食料品の消費税率引き下げを検討している。とりわけ食料品価格の上昇は生活への直撃度が高い。総務省「家計調査」によれば、2024年の二人以上世帯のエンゲル係数は28.3%と高水準にあり、食費負担の重さが改めて意識されている。

 名目賃金は上向いているが、実質賃金の改善はなお弱く、多くの家計では「賃上げより先に値上げを感じる」状況が続く。そのため、飲食料品減税は景気刺激策というより、物価高に対する生活防衛策として支持を得やすい。

 もっとも、政策評価は「家計が助かるか」だけでは足りない。日本経済は付加価値の多くをサービス産業が生んでいる。

 飲食料品だけを相対的に安くする政策は、家計支援であると同時に、外食、観光、地域の食文化、ひいては“安い日本”をどこまで許容するのかという国家戦略の問題でもある。以下では、生活支援としての意義を認めつつ、その分配効果、産業構造への影響、観光への波及、そして日本経済の中期的な選択肢を検討したい……

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「物流2024年問題」は物流コストにどんな影響を与えたのか?物価上昇と比較して見えてくる“現実”、価格転嫁はできているのか

(Hakase_/gettyimages)

 トラックドライバーの時間外労働時間の制限が2024年4月に施行され、「物流2024年問題」に突入してから、早くも1年4カ月が過ぎようとしている。“突入”後1カ月が経過した24年5月7日に投稿した「〈物流2024年問題〉物流コストの上昇は本当に物価高騰の主要因なのか?」において筆者は、折から顕在化していた物価上昇の主要な原因のひとつのように取り上げられる傾向のあった“物流費の上昇”について様々なデータに基づき分析を行った。

 その際筆者は、売上高に占める物流コストの割合が5%前後、輸送費の割合が3%前後のレベル、トラック運賃の値上り率も3%前後のレベルであったことに鑑み、荷主の売値を二桁の割合で値上げしなければならないような影響は、物流コストからは現出しないと結論付けた。

 その後1年以上経過した現在においても、食料品をはじめとする広範な種類の商品の物価上昇は終息しておらず、その主たる要因として物流費の“高騰”を取り上げる報道は、引き続き後を絶たないように見える。そこで今回は、前回といささか異なるアプローチで、「物流2024年問題」の物流費、特にトラック運賃を中心とする輸送費への影響を分析してみることとする。

 まずは、前回も取り上げたNX総合研究所が四半期ごとに実施している業況判断指数(DI、Diffusion Index)調査「企業物流短期動向調査」(NX総研短観)の動向から見ていきたい……

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〈解説〉値上げしても売れる!日本マクドナルドの価格戦略、既存店は売上・客数・客単価の全てが上昇、「値上げの春」に持つべき視点

日本マクドナルドの価格戦略は、値上げが進む日本企業にとって学ぶべきことも多い(tupungato/gettyimages)

 「値決めは経営である」と稲盛和夫氏が言ったのは有名な話だが、近年、多くの日本企業は原材料費や人件費の上昇、物流コストの増加など、さまざまなコスト要因に直面し、価格戦略の見直しを余儀なくされている。

 日本マクドナルドが2025年3月に値上げを発表。外食チェーンにも広がっており、ガストは、24年11月に約6割のメニューを20~40円値上げし、ロイヤルHDは25年2月にファミレスチェーン「ロイヤルホスト」で約8割の商品を値上げした。

 これまでの日本企業は“よいものを安く大量に”という価値観で成長してきた。松下電器(現・パナソニック)の創業者で経営の神様とも呼ばれた松下幸之助の“水道哲学(水道の水のように、製品を大量に手に取りやすく提供する)”は伝統的パラダイムの典型であろう。しかし、日本企業は提供する量、価値、価格の3点において何がベストなバランスかを再考する時が来ている。

 本稿では、日本マクドナルドの値上げ戦略と、その背後にある経営戦略と今後の価格戦略の可能性について考察する。

 日本マクドナルドは、22年3月と、22年9月にも値上げをしている。その都度メディアは値上げを憂い、SNSなどではネガティブなコメントが出てきていたが、結果としては昨年対比で10%ほど売上がアップしている 。値上げ直後の月次を見ても、既存店が売上高・客数・客単価のどれも前年同月比でマイナスになっていない……

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新米1俵が1年間で2万円も下落!なぜ、コメの価格はこれほどまでに乱高下するのか?

(choir421/gettyimages)

 9月上旬、大手食品スーパーのレジ横に山積みされた5キログラム(kg)袋の精米の価格は1980円(税別)と、久しぶりに5㎏2000円以下の精米を見た。すでに新米(2026年産、令和8年産)もスーパーに並び始めており、いち早く首都圏に並び始めた南九州の早期米こそ5kg2980円であったが、千葉の新米が出回り始めると2000円台前半まで下落した。

 市中で取引される新米(2026年産・令和8年産)の価格は玄米60㎏(1俵)当たり1万2000円から1万4000円台という安値で、昨年産米が出回り始めた同じ時期に比べおおよそ2万円も安いという極端な価格になっている。供給の安定と価格の安定を目的に制定された「改正食糧法」がありながらなぜコメの価格はこれほどまでに乱高下するのか?

 コメの価格を示すのにメディアがよく取り上げるのが、農林水産省が公表する相対取引価格やスーパーでの小売販売価格、それと産地の農協概算金(仮渡金)である。各産地の全農県本部等農協系統が生産者に示すいわゆる概算金がその年のコメの価格のように報じられるが、これは全く違う。特に26年(令和8年産米)の概算金と市中で取引される価格とでは大きな開きがある。

 各産地の農協系統が示す概算金は産地によって大きな開きがあり、高いところではコシヒカリで2万円のところもあれば1万円という安い価格を提示するところもある。ただし、これはあくまでも「概算金」であってその価格で売れたということではなく、実際に売れた価格で最終清算するというのが農協系統の共同計算方式の特徴と言える。

 このため1万円の概算金を提示した農協であっても1万8000円で売れれば最終清算段階で生産者に8000円を追加で払う。これまでの慣例であれば全農県本部は収穫前に概算金を決めるにあたって、最終的に売れる見込み価格を予測し、そこから流通経費や保管料、手数料等を差し引いた価格を生産者に提示していた……

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