2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月9日

 8月3日付のニューヨーク・タイムズ紙で、Igor Ivanov元露外相及びMalcolm Rifkind元英外相が連名で論説を寄稿し、ウクライナ危機を上手く管理すべきだとして、当事者の自制、軍隊同士のコミュニケーションの改善、NATO・ロシア理事会の活性化を提案しています。

 すなわち、ロシアと西側ではウクライナ危機への見方が異なる。しかし、MH17便の悲劇から、両者はもっと近づくべきだと考える。人命喪失の規模だけではなく、この事件はより大きな危険をはらんでいる。東部ウクライナ紛争が、NATOとロシアの直接的軍事対決に至る可能性が懸念される。

 ロシアと西側の信頼はなくなり、双方の軍の接触や情報交換はほとんどなく、危機管理体制は不十分である。双方には高い警戒レベルの多くの核兵器がある。

 NATO・ロシア理事会は活動を停止し、対話などのルートは縮小されている。

 意図せざる軍事エスカレーションを避けるため、我々は欧州指導者ネットワーク、ロシア国際問題理事会などのタスク・フォース・メンバーとともに、ウクライナでの何らかの合意に加え、3つの措置が必要と考える。

 第1:ウクライナとその外部で当事者は軍事的・政治的自制をすべきである。

 ロシアの軍用機が黒海で駆逐艦ドナルド・クックに近接飛行した。双方の政治指導者は交戦規則を見直し、軍に自制させるべきである。また他の凍結された紛争を再熱させないように、ロシアと西側は影響力を行使すべきである。

 第2:軍部同士の対話を改善すべきである。奇襲攻撃の心配を減らせば、安定に資する。軍の活動についてのデータを交換し、視察団を受け入れるなどすべきである。相互不信の減少につながる。

 第3:NATO・ロシア理事会は今こそ頻繁に開かれるべきである。

 領土の一体性、人権の尊重を欧州安保の基礎としたヘルシンキ最終文書、1975年合意の基本事項を討議する国際会議を開催する必要がある。

 将来、ウクライナ経済はEUとロシアに統合されるべきで、EUとユーラシア連合の協力についての対話を続けるべきである。現在協力は難しいが、技術的検討は続けられよう。


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