9月27日-10月3日号の英エコノミスト誌(11p.)は、米国対IS(「イスラム国」)の戦いは、ISの将来を左右するだけでなく、世界の安全への米国のコミットメントを試し、世界における米国の役割を規定することになるだろう、と述べています。
すなわち、ISの台頭は、米国の政策の反映でもある。シリアの人々がアサド政権に対して立ち上がっても、オバマは、事態を放置し、アサドが自国民を虐殺し、さらに、化学兵器の使用という「レッドライン」を越えても動こうとしなかった。米国の支援を得られなかった穏健反政府勢力は粉砕され、その力の真空に進出したのが、組織化された残虐なISだった。
しかし、ISは米国の世論を変えた。ISがモスールを制圧し、米国人の斬首の様子をメディアで流すと、中東での軍事行動に懐疑的だった米国世論も、ISを米国に対する直接の脅威と認識し、IS 打倒を要求するようになった。つまり、オバマは中東の秩序回復のために攻撃するチャンスだけでなく、近年の米国衰退論に歯止めを打つチャンスも与えられたのだ。
問題は、オバマが微妙な外交を遂行できるかどうかだろう。今までのところオバマはよくやっている。マリキを退陣させ、ケリー国務長官をサウジ・アラビアやヨルダンに派遣して協力を取り付けた。米国は、シリアやイラクのスンニ派には、米国はシーア派に与するわけではないことを説明した。
しかし、オバマがやるべき事はまだある。例えば、トルコはやっと空爆への賛意を示唆したが、行動が伴っていない。また、IS掃討にある程度成功しても、そこに生じる力の真空を埋められるよう穏健勢力を支援しなければ、別の過激派が新たに台頭する可能性がある。
IS阻止という困難な任務を担えるのは米国だけだ。オバマが関与と抑止の任務を再開したのは正しい。今度はそれを最後までやり遂げなければならない、と述べています。
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米国が漸く本腰を入れてIS対応に乗り出したのを評価し、その役割に対する期待と問題を述べた論説です。