『徒然草』の中にこんな記述がある。
「仁和寺〔にんなじ〕の法師が、年をとるまで石清水〔いわしみず〕八幡宮をお参りしたことがないことを情けなく思い、ある時、思い立ち、一人で歩いてお参りに行った……」
この文面からわかるように、石清水八幡宮は京都の神社の中でもとりわけ格の高い神社だ。歴代の天皇から崇敬され、『枕草子』や『源氏物語』にもその名が登場する。
そんな石清水八幡宮の最も大きな祭事が、毎年9月15日に行われる「石清水祭」だ。もともとは「生きとし生けるもの」の霊を慰める放生会〔ほうじょうえ〕として、清和天皇の貞観5(863)年に始められ、天暦2(948)年以降は勅祭(天皇の勅令による祭り)として斎行されるようになった。
祭りは、作法も装束もすべてが平安王朝の時代のままで、“動く古典”と称されている。なかでも見どころは、15日未明の「神幸〔しんこう〕の儀」。3基の鳳輦〔ほうれん〕(神輿)が、約500人の神人〔じにん〕と呼ばれるお供の列を従えて本宮のある男山を下り、山麓の頓宮〔とんぐう〕に渡御される。これは、当時の天皇行列を再現したものだとか。
また、午前8時に放生川のほとりで行われる放生行事も見どころの1つ。雅楽が流れるなか、神職が稚魚を川に放ち、童子4人が蝶の羽を背負い、「胡蝶の舞」を奉納する。平安王朝文化を目の当たりにする典雅なお祭りをぜひ一見あれ。
石清水祭
京都府八幡(やわた)市・石清水八幡宮(京阪本線八幡市駅下車)
〈問〉075(981)3001
http://www.iwashimizu.or.jp/
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