2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月22日

 核合意はイランの核計画を廃止しないが、他の中東諸国が新しい政治秩序で自らを強化することを可能にする。アラブ諸国は米国と協力して、その目的に向け邁進すべきである、と述べています。

出 典:Vali R. Nasr ‘Saudis Should Welcome the Iran Deal’(New York Times, April 14, 2015)
http://www.nytimes.com/2015/04/15/opinion/vali-nasr-saudis-should-welcome-the-iran-deal.html?_r=0

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 サウジアラビアや他のアラブ諸国が、Nasrの言うように、イランの核活動が厳しく制限される10~15年の間に、国内の政治的分裂の解決、地域の不安定要因の除去に努力すれば、中東の安定のため歓迎すべきことです。

 ただそれは容易なことではありません。Nasr自身「中東の中心は崩壊した」と言っており、不安定の要因である宗派、部族、民族間の分裂は根が深いです。イエメンについても、Nasr自身、民族的抗争が何十年も続いていると述べています。

 Nasrの言う機能する政府の樹立の可能性が考えられるのはイラクです。シーア派の政権がスンニ派を阻害しないような政策を取る必要があり、それは現政権下では不可能ではありません。

 破綻国家のうちシリアについては、内戦を終わらせるにはアサド大統領が退陣する必要があります。しかし、アサド大統領はロシアとイランが支持していて、アサド大統領の退陣は容易には実現しないでしょう。

 イエメンについては、ホーシー派が対話を呼び掛けていますが、仮に対話がまとまる場合には、ホーシー派主導の政権ができる可能性が高く、サウジアラビアは反対するでしょう。

 一つの鍵は、イラン核交渉が最終合意に達した場合、イランの外交が穏健化するかどうかです。イランは世界経済との再統合を求めていて、その可能性はあります。イランの外交が穏健化すれば、シーア派とスンニ派の対立は緩和する可能性があります。ただしその他の、部族間、民族間の対立は続くでしょう。

  
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