2024年11月16日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月6日

 ワシントン・ポスト紙の3月30日付社説が、サウジ主導のアラブ連合軍は大した成果を挙げ得ず、戦闘はイラン対サウジと同盟国の戦争に拡大するかもしれない、と述べています。

 すなわち、サウジ主導のイエメン介入とアラブ合同軍の創設は、中東における歴史的転換点を意味するかもしれない。

 伝統的な米国の同盟国であるサウジやエジプトは、米国の受け身の姿勢やイランとの核交渉に嫌気がさし、米国に頼らずに自分たちの利益を守ろうと積極的に動いている。

 これまでサウジ主導の軍事作戦は、空爆と海上からの攻撃に限られているが、ホーシー族を押し返せるか、まして前政権を復活させることができるか、明らかでない。

 エジプトとパキスタンが地上軍の派遣を示唆し、サウジ軍が国境に集結していると伝えられているが、軍事専門家は、これらの軍が戦闘で鍛えられたホーシー族を打ち負かし、イラクに匹敵する大きさの無法国家を平定できるか疑問視している。早く政治的交渉に戻らなければ、軍事作戦はイエメンの分裂を促進し、アルカイダやIS(イスラム国)の拡大に力を貸すだけであろうとの見方もある。

 アラブ連盟の首脳会議の後エジプトのシシ大統領が発表した新しいアラブ軍は、理論的にはアラブ諸国の提供する4万人の志願兵からなるが、能力が問題である。アラブで最大の軍事力を持つエジプトは、自国のシナイ半島のイスラム過激派の掃討すらできない。

 半世紀以上にわたり、アラブの同盟国に指導力と軍事力を提供するのが米国の役割であった。イエメンでは、オバマ政権はホーシー族が前政権を倒す前に空爆でホーシー族を撃退できたが、現実にはイランとの核交渉をまとめるため、当初ホーシー族の政権奪取を受け入れると示唆した。

 オバマ政権はこの時点でサウジの介入を諜報面で支援すると言っている。しかし、それはサウジの介入の成功を保証するものでも、イエメンにとって最も望ましい、交渉による解決をもたらすものでもない。


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