サウジは、米国のシェールオイルとの競争、イランとの覇権争い、「イスラム国」の脅威と種々の外患に悩まされているが、加えて王位継承者の世代交代も迫りつつある、とエコノミスト1月10-16日号が報じています。
すなわち、今、サウジは困難な時期にある。(1)原油問題では、世界市場シェアをめぐって米国のシェールオイルと鎬を削り、(2)中東の覇権では、米国が競争相手のイランと妥協してしまうことを恐れ、(3)対シリアでは、アサド政権打倒に失敗してアサド派のイランを利してしまい、(4)対「イスラム国」では、米主導の空爆に加わったために、テロの標的にされる危険が出てきている。実際、1月4日には、イラクとの国境付近でサウジ軍の将軍1人と兵士らが自爆テロによって殺された。
それに加えて、王位継承の問題がある。アブドラ国王の後継者は異母弟のサルマン王子であるが、既に彼も78歳で、しかも認知症を患っているとも言われる。そのためか、昨年アブドラは末弟、69歳のムクリン王子を次席後継者に指定している。
問題は、次世代に王位が移る時だろう。サウジは長子相続制をとらず、これまで王位はサウド王朝を創設したアブドルアジズの息子たちの間で回されてきた。しかし、この世代はまもなく消え、王位は何百人もの王子がひしめく孫世代に移る。そうなれば何が起きても不思議ではない。アブドラは息子のミシャアル王子(メッカ州知事)かミテブ王子(国家警備隊司令長官)に継がせたいようだったが、次世代の王子たちの中にはムハンマド内相のような実力者もいる。
そして、将来のサウジ国王は、外交にもまして内政問題で苦労することになるかもしれない。国内では問題が山積している。リベラル派はコーランを基盤とし、女性に車の運転も認めない現体制の改革を求めているが、厳格なワッハーブ主義の支配層は改革に抵抗している。中東で宗派対立が強まる中、人口の15%を占めるシーア派住民の間にも不穏な空気がある。
何よりも、3000万の若い国民が仕事を必要としている。この問題を解決するには、彼らへの補助金や公的支援を縮小し、国家の石油依存も減らしていかなければならない、と述べています。
出典:‘Ail the king’(Economist, January 10-16, 2015)
http://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21638134-generational-change-looms-ail-king
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サウジアラビアが内憂外患を抱えていると言うのは、記事の言う通りでしょう。