パキスタン出身のジャーナリスト、地域専門家のアハメド・ラシッド(Ahmed Rashid)が、12月10日付フィナンシャル・タイムズ紙の論説で、「イスラム国」(IS)は各地におけるイスラム過激派への影響力にもかかわらず、未だシリア、イラク以外の地域、国において勢力を根付かせる段階には至っていない、と述べています。
すなわち、最近、チェチェンやインド・カシミールで起きたテロ事件に関連し、一部のメディアや専門家からISとの繋がりが指摘されるなど、ISの存在が至る所に浸透しているが如きの不安が醸成されている。
ISは、9.11直後のアルカイダのような存在となっている。しかし、アルカイダは、それまで20年以上に亘ってスーダン、アフガニスタン、パキスタン、イエメン、サウジ等において組織の基盤を構築してきた。
他方、ISは米軍によるイラク侵攻後のイラクにおいてリーダーのザルカウィがアルカイダの支部として組織した集団であり、近年、シリア及びイラクにおいて急激に勢力を増大させたものの、インド、パキスタン、中央アジアや北アフリカにまで組織網を広げ、根を下ろすような存在にはなっていない。また、各地の過激派組織もISの傘下に入るような意思もなく必要性も感じていない。
ISの比類のない残酷さは深刻な脅威であり、各国の諜報機関はイスラム過激派によるテロについて何でもISによる関与を疑う傾向があるが、未だそのような状況には至っていないのが実情である、と指摘しています。
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ISの急激な勢力拡大と知名度の浸透にもかかわらず、その中核的な活動範囲は今のところシリア・イラクに止まっている、というのは、本論説の指摘する通りでしょう。