2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月6日

 戦闘は、やがて、イラン対サウジとその同盟国との地域戦争になる可能性がある。それは米国の後退が作り出した真空が作り出す紛争である、と述べています。

出典:‘An Arab military force could compound the region’s problems’(Washington Post, March 30, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/an-arab-military-force-could-compound-the-regions-problems/2015/03/30/8e3fd6b4-d6fd-11e4-8103-fa84725dbf9d_story.html

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 サウジがイランの支援するホーシー派がイエメンを席巻しそうになったことに強い危機感を抱いたのは十分理解できます。中東、特にペルシャ湾岸では、歴史的にイラン、イラク、サウジの3国が覇権を競っていましたが、イラクが脱落し、現在中東ではサウジとイランが覇を競っています。サウジとイランの対立は、スンニ派とシーア派の対立でもあります。

 サウジにはイスラム教の3大聖地のうち2つ(メッカとメディナ、あと一つはエルサレム)があり、サウジは2大聖地の守護者として、イスラム教スンニ派の総本山を以って自ら任じています。イランの影響力の拡大は、単に地政学的見地からのみならず、スンニ派の総本山としても放置できないのです。

 その上、サウジの人口の約1割がシーア派で、東部の油田地帯に密集しています。

 サウジにとって、1500キロにわたる国境で接した、戦略的に重要な隣国イエメンが、シーア派のホーシー部族に乗っ取られることは、イランの影響力の拡大として放置できないのみならず、国内のシーア派への影響を懸念せざるをえません。

 イエメンのホーシー派を撃退するには、空爆のみならず、地上軍の戦闘が必要でしょうが、社説の言う通り、アラブ連合軍の地上部隊にどれほど能力があるかは定かではありません。サウジの陸軍に至っては、かつて海外で戦闘した経験がなく、決定的な勝利を得るのは無理なのではないでしょうか。そうであれば、イエメンの戦闘は長期化する可能性が高いですが、ただ、イエメン情勢はサウジにとって安全保障上の問題であるとともに、スンニ派総本山の面子の問題でもあり、決定的な勝利は得られなくても攻勢の手は緩めないでしょう。

 その間戦闘がサウジと同盟国対イランの戦闘に拡大するかどうかですが、サウジはすでに戦闘に参加しているので、拡大するかどうかはイランの出方によります。イランはイエメンのホーシー派の優位は維持したいと考えるでしょうが、そのために、たとえば革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊をイエメンに派遣することまで考えるのかは疑問です。


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