この歌の料理を再現してみた。奈良時代には醤油はなかった。醤=ひしおというのは、大豆、小麦、米などに麹と塩水を加えて発酵させた「もろみ」状の調味料である。蒜とは、ニンニク、ノビルなど、ユリ科の植物で匂いのするものの総称である。
市販品の醤油ひしお、酢、生ニンニクをすり鉢にいれ、ペースト状になるまで、すりつぶす。これに鯛の薄造りをあえて、食べてみた。
なかなかの代物であった。ニンニクの刺激臭をひしおの味がやわらげてくれる。ワサビ醤油で食べるのにくらべると、重厚、複雑でありながら、酢のさわやかさが感じられる味である。ひしおに、バルサミコ酢とオリーブ油を加えて、カルパッチョ風に仕立てると、ワインのつまみにもなる。
万葉グルメは、現代にも通用する味である。
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