ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、ファリード・ザカリアが、4月16日付同紙のコラムにて、オバマのアジア回帰戦略はどうなったのか、米国は中東よりアジアに精力を集中すべきである、と主張しています。
すなわち、オバマ外交は、イランとの核交渉、イラク、イエメン、シリア等中東に集中している。アジア回帰戦略は、そもそも、重要性が縮小している中東に精力を掛け過ぎているとの議論から生れたものである。アジアこそ、世界の将来を握る地域である。ところが、オバマもケリーもアジアにはほとんど時間を掛けていない。新しいイニシャティブもない。TPPも議会、それも与党である民主党内部から反対が出ている。AIIB(アジア・インフラ投資銀行)について同盟国に不参加を呼び掛けたが、同盟国の英国でさえそれに従わなかった。
これからの世界の安定は、米国が中国を如何に上手く取り扱うかで決まる。対中国抑止は必要かつ重要なことであり、日本、豪州、フィリピン等との安全保障協力の強化は賢明な策である。しかし、ローズクランス等の近著(The Next Great War?)は、抑止に加えて、中国を世界のシステムに組み込むための協力強化も必要であるとしている。この面でのオバマの成果は不十分である。中国のIMFでの投票権はオランダとベルギーを合わせたものでしかない。米議会は中国の投票権引き上げに反対している。オバマ政権のAIIB反対は極めて愚かだった。中国がアジアの莫大なインフラ需要に対処するために地域銀行を作ってはいけないのであれば、中国は如何に影響力を使えば良いのか。米国は間違って始めた戦いで負けてしまった。
今や中国の戦略は経済発展を通して勢力圏を拡大していくことにある。最近の会見で、李克強は、非常に協調、協力的だったが、南沙諸島での滑走路建設は着々と進めている。
米国は50以上の国と同盟関係にあるが、中国には北朝鮮しか居ない。しかし、前出のローズクランスは、同盟は強みであるが問題にもなると言う。第一次世界大戦は同盟関係にある小国が大国を巻き込んで始まった。対中関係が悪化している日本が、そのようなきっかけを作ることはないのだろうか。米国と同盟国の利益は同一とは限らないことを忘れるべきでない。