2024年12月15日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月25日

 アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)日本研究部長のオースリンが、安倍総理の訪米に期待を示し、オバマが日本側の対応に十分応えるよう求める論説を、4月26日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿しています。

画像:iStock

 すなわち、戦後70周年への言及ぶりは疑いもなく安倍総理の議会演説の重要な一部であり、総理が戦争についての過去の発言の意味を説明し、1930年代、40年代の残虐行為に対するこれまでの日本政府のお詫びを再確認するよう多くの人が期待していよう。

 しかし、戦争の問題は、韓国と中国では新聞の見出しになろうが、安倍総理の訪問は、将来に関するものである。日米関係を前進させ、アジアの安全保障のリスクに対処する上で数十年のうちで最良のチャンスである。そして、アジアにおけるチャレンジに対処する日本のイニシアチブを米国が明確に後押しすることがより重要なことである。総理の意向は明らかであるが、今一つ明確でないのはオバマである。しかし、両者は中国のアジアにおける活動と北朝鮮の核とミサイルの脅威に懸念を深めているのだから、オバマには安倍総理がその野心的な計画を進めることを手助けする十分な理由がある。

 日本の政策が防衛指向であることに変わりはないが、冷戦時代の戦略を捨て、自衛隊の近代化とミサイル防衛能力の向上を図っている。アジアの安定のために豪州、インド、フィリピンといった新しいパートナーを見出し、安全保障について協力を進めている。こういう状況に適合するよう米国はどう対応していくのか。米国はアジアへの「回帰」政策の下でフィリピン、ベトナムなどの東南アジア諸国と安全保障協力を拡大してきた。安倍総理の訪問に合わせ日米の防衛協力の新しい指針が合意される。しかし、米国はその努力をどうやって日本の努力と一体化し、日本の地域的なリーダーシップを支持していくのかについてなお考えねばならない。

 安倍総理の計画に米国が有する安全保障上の利益と衝突するものは無く、全て米国の目標と一致している。重要なことは日米間の政治的関係を強固にすることである。日米間にも米中間の戦略経済対話に対応するものを設ければ、日本のアジアでの役割を支持することになろう。日本に合同演習や合同パトロールのような米国の地域的なイニシアチブに参加を求めることも新しい時代を切り拓くであろう。


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