■今回の一冊■
CATASTROPHE
筆者Dick Morris & Eileen McGann, 出版社HarperCollins, $26.99
NYタイムズ・ベストセラーリスト
単行本ノンフィクション部門
8週連続ベスト5入り
オバマ大統領の政策を批判する“反オバマ本”がまた、アメリカのベストセラーリストの上位に顔を出している。タイトルも「Catastrophe(破滅)」と痛烈だ。大きな政府を志向するオバマ政権の経済運営はやがて、アメリカを破滅に導くと批判する。民間の経済活動への政府の介入は最小限に抑えるべきで、金融機関やゼネラル・モーターズ(GM)など自動車産業を、経済危機を理由に国が救済するのは間違いと断じる。
絶好調の反オバマ本
ニューヨーク・タイムズ紙の単行本ノンフィクション部門の週間ベストセラーリストでは、7月3日付(ウェブ版)で1位に初登場。その後も売れ行きは好調で、直近の8月21日付ランキングでも5位につけている。
本コーナーで以前に取り上げた、保守派の論客の手になる反オバマ本の系列に属する「Liberty and Tyranny」もまだ、同日付で3位と売れ続けている。ベストセラーリストでの反オバマ本の快進撃をみる限り、就任当初はアメリカ国民の間で熱烈な支持を集めたオバマ大統領の政権運営基盤も実は盤石ではなくなりつつある実態が分かる。
本書はアメリカのテレビのニュース番組などで政治コメンテーターとして活躍するDick Morris(ディック・モリス)と、その夫人のEileen McGannとの共著だ。
ディック・モリスはかつて、民主党、共和党を問わず大物議員の政治コンサルタントを務め、党派を問わずに選挙での勝利を請け負う選挙のプロとも呼ばれた大物だ。1990年代半ばには、クリントン大統領の選挙参謀として活躍し、絶望的と言われた2期目の再選へと導き、当時は全米で注目を集めた。ところが、96年に女性スキャンダルが明るみに出て、クリントン大統領の顧問から辞任した経歴を持つ。選挙と政策の裏の裏まで知り尽くした専門家が書いただけに説得力があり、保守的なアメリカ人の考え方がよく分かる。
例えば、冒頭近くで次のように高らかに主張する。
We now have a socialist in the White House. Barack Obama firmly believes in government control of our major industries, a hallmark of European socialism. Watch him. First it was the banks, then the auto industry. What’s next? He’ll keep going until the federal government owns or dominates every major American business and sets the salaries for all employees. (ページ:xi)
「今やホワイトハウスには社会主義者がいる。バラク・オバマは政府による主要産業の統制を強く志向しており、それはヨーロッパ的な社会主義の専売特許にほかならない。気をつけろ。まず銀行界、そして自動車産業。次に何がくるか? 連邦政府があらゆるアメリカの主要な会社を保有するか支配するまでオバマは突き進み、すべての労働者の給料を決めることになるだろう」