2024年7月20日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年8月26日

 さらに、国際社会における市場間競争という観点から、オバマのヨーロッパ流の政策が持つ副作用を次のように指摘する。極論にもみえるが、そうした発想そのものがアメリカ人ならではのものなので、長いのを覚悟で以下に引用する。

 The fact is that Europe desperately needs Obama. When François Mitterand, a Socialist, became president of France in 1981, he nationalized a broad swath of French business and industries and embarked on a vision of achieving socialism in France. Predictably, French capital fled to Margaret Thatcher’s Britain and Ronald Reagan’s United States, where free markets and low taxes predominated. (中略)
  Europe’s Left learned its lesson: it is virtually impossible to launch socialism in one country when there are competing models nearby. So it began to focus on integrating all of the continent’s economies into the European Union (EU) and moving it toward socialism. (中略)
  But one problem remained: the United States was not on board. Stubbornly pursuing free-market and minimal-government policies, Washington benefited from a massive outflow of capital and jobs from Europe to the United States as employers and the wealthy fled the high taxes and intrusive regulation of the European Union. (p65)

 「実際のところ、ヨーロッパはオバマを熱烈に必要としている。1981年にフランスでフランソワ・ミッテランが大統領になったとき、フランスの企業や産業を幅広く国有化し、フランスで社会主義のビジョンを実現すべく突き進んだ。予想された通り、フランスの資本はサッチャーのイギリスとレーガンのアメリカに逃げていった。イギリスとアメリカでは自由市場と低税率が際立っていたからだ。(中略)
  ヨーロッパの左派は教訓を学んだ。競合する体制がそばにあるときには、一つの国だけで社会主義を導入するのはほとんど不可能だ。そこで左派は、大陸の国々の経済をEUとして統合することに重点を移し始め、社会主義へと向かっている。(中略)
  しかし、問題がひとつ残った。アメリカが乗ってこなかった。自由市場と小さな政府を頑固に追求したワシントンは、ヨーロッパからアメリカへと大量に流出してくる資本や雇用の恩恵を享受した。事業主や富裕層はEUの高い税率と邪魔な規制から逃げてきたのだ」

 自由な市場主義を基本としてきたことが国際社会におけるアメリカの強さの源泉であることを強く自負していることがうかがえる。逆にいえば、貧富の差はあっても従来の自由競争を尊重する文化を維持しなければ、アメリカはヨーロッパと同じ土俵に立つことになり、世界中から資本を集めてきたアメリカの魅力が衰退し国力も衰える。だから、ヨーロッパ諸国と同質になるような政策をとるべきではないという論法だ。

 本書の批判の矛先はオバマ政権だけにとどまらない。大物議員が特定の利益集団と癒着し政策をゆがめている現状や、大統領の元側近らが政界コネクションを活用してロビイストのように暗躍し、カネを稼ぐ構造的な問題も取り上げる。

 特に、法による規制と監視の対象になっているロビイストと実質的に同じ活動をしながら、ロビー活動を展開する会社の顧問という肩書で規制の網の目をすり抜けるstealth lobbyists (見えないロビイスト)への規制強化も主張する。

 オバマ政権に対するアメリカ人たちの不満と、アメリカのかならずしも健全ではない政治の現場をみられる興味深い書だ。

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