Obama plans to expand the role, size, and cost of government vastly and to regulate each and every aspect of corporate and commercial conduct. (ページ:xii)
「オバマは政府の役割やサイズ、コストを大幅に拡大し、企業活動や商取引のすべての側面を規制するつもりだ」
とにかく政府による民間経済への介入を嫌い、政府の役割が大きくなれば経済の効率性が損なわれるという、アメリカ保守派の典型的な考え方がここには鮮明だ。2003年にりそな銀行を国有化したことをきっかけに、株式相場が上昇に転じた経験などを持つことから、国有化にはアレルギーのない日本人には想像もつかないほど、ゼネラル・モーターズ(GM)の国有化はアメリカ人にとっては衝撃だったのだ。
オバマ政権が2月に打ち出した7870億ドルの景気刺激策なども批判する。その他のオバマ政権下で決まった新たな出費なども合算すると、政府支出はアメリカの国内総生産(GDP)の49.4%を占めるにいたると、筆者のディック・モリスは試算する。これは社会民主主義の牙城であるヨーロッパ諸国に並ぶ水準だと警鐘を鳴らす。
Obama’s stimulus bill was a spending program, not an economic recovery program. (p25)
「オバマの刺激策は消費計画であり、景気回復策ではない」
とまで、断じる。そもそも、財政出動してお金をつかえば景気が回復するという経済政策の考え方が間違っていると主張する。例として、不名誉なことだが、日本の90年代の失われた10年をとりあげる。
All told, Japan spent about $1 trillion (中略) in trying to jump-start its economy. By April 2009, the debt-to -GDP ratio was an incredible 217 percent. What did it get for its trouble? An average growth of .6 percent a year! (p31)
「日本は景気を反転させようとして、総額で約1兆ドルを(中略)つかった。その結果、2009年4月時点で、国の債務のGDPに対する比率は217%と途方もない水準にのぼった。この困った事態の見返りとして何を得たのか? 年平均0.6%の経済成長率だ!」
ヨーロッパとの“違い”を追求するアメリカ
本書では、ヨーロッパ的な社会民主主義の政治体制にアメリカが移行する危険性を繰り返し指摘する点も見逃せない。
By raising taxes on the wealthy and using the money to fund government spending and tax reductions for the middle class and the poor, Obama is leading the United States very close to the European model of social democracy. (p67)
「富裕層への課税を増やし、そのお金で政府支出を拡大し、中間層や貧困層へは減税を実施する、オバマはアメリカ合衆国をヨーロッパの社会民主主義のモデルに大きく近づけつつある」