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2015年7月17日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。


Q :行おうとしている細胞移植治療は

ーー半月板を縫合した後に、滑膜から採取した幹細胞を移植することにより、軟骨や半月板をきれいに修復することができ、その後の患者の負担も小さい。縫合による幹細胞を移植する治療法は昨年8月から臨床研究をスタートさせている。移植した幹細胞が再生を促進してくれる。

 7月末から臨床を始めるのは逸脱した半月板損傷を修復し、滑膜から採取した幹細胞を移植する再生治療だ。40歳~50歳になると半月板が所定の位置からズレることがあり、その半月板を基の位置に戻すセントラリゼーション手術と同時に、幹細胞を軟骨と半月板に移植することで損傷した軟骨、半月板の再生を促すことを期待する。滑膜由来の幹細胞を使った変形性膝関節症への細胞移植は世界的にみても行われた例はない。

Q :細胞移植で滑膜に着目した理由は何か

ーー滑膜は関節を構成している要素の一つで、関節内の骨についている薄い膜。関節液を産生して関節がスムーズに動く役割をしている。滑膜には、いろいろな組織に分化する能力のある幹細胞が存在し、滑膜由来の幹細胞は周辺にある軟骨や半月板になりやすい特徴がある。

 半月板や軟骨が損傷すると、滑膜から幹細胞が自然に動員されて、その一部が半月板や軟骨の損傷部分に接着して自然修復に寄与するというメカニズムも分かってきている。小さな損傷はこのメカニズムを使って自分で治してくれるが、大きな傷は細胞の数が足りないので修復できない。このため、細胞移植を使ってこの修復の働きを促進させるのが今回の移植手術の狙いだ。

 ノーベル賞を受賞した山中伸弥京都大学教授が発見したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は多くの種類の細胞に分化するが、自分自身のiPS細胞で目的の細胞を作るのに数カ月もかかる。一方の滑膜由来の幹細胞はわずか2週間で十分な数を用意できるので、大幅にスピードアップできるのが大きな利点だ。また自分の血清を使って培養する場合、最もポピュラーな幹細胞といわれる骨髄由来の幹細胞と比べて、滑膜由来は効率よく増殖することも確かめられている。普通の場合、300mlの血液を採取して70mlくらいの血清を用意して、これで滑膜から取った幹細胞を培養する。

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