2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年8月6日

 スパイ活動は国際関係で平素見られることであるが、これは通常の事態ではない。中国は9月に習近平とオバマの円滑なサミットを望んでいるが、オバマは直ちに憤激し、泥棒はテーブルでのハーモニーとは両立しないと告げるべきである。それでも北京が平然と構えるのであれば、米国は中国の下手人を目標とした報復の準備を始めるべきである。二国間関係の全てを危険に晒す要はないが、泥棒は懲らしめられねばならない。それが将来の攻撃を抑止する唯一の途である、と述べています。

出典:‘The OPM cyberattack was a breach too far’(Washingon Post, July 5, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/the-opm-cyberattack-was-a-breach-too-far/2015/07/05/de2b98b2-20e9-11e5-aeb9-a411a84c9d55_story.html

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 OPMからの個人情報流出は、6月4日に発表された分にとどまらず、中国による大規模な諜報活動であると疑われ、深刻な問題として受け止められています。

 通常、人民解放軍の部局が仕掛けるサイバー攻撃は軍や産業の情報を標的にしていますが、今回の事件は中国の情報機関による工作にとって有用な情報(住所、氏名、学歴、軍歴、外国との接触記録、病歴、破産歴など)の取得を狙っていると見られることに米国は警戒感を強めているということです。今回の事件の下手人とされる国家安全部に属するグループについては、その規模など分かっていないようです。

 今年4月に発表された国防総省のThe Cyber Strategyという文書はサイバー攻撃に対する抑止について述べていますが、サイバー攻撃には通常の意味での抑止は働かないと思われます。同文書は、米国の利益に対するサイバー攻撃には適当な手段をもって反応する、と述べています。北朝鮮のインターネットの外部との接続が切断された事態が、北朝鮮が下手人とされるSony Pictures Entertainment に対するサイバー攻撃に対する米国の報復ではないか、と噂された事案がありました。この種の報復措置が何らかの抑止の効果を持つ可能性はあります。社説が結論でいうように、何らかの措置を検討して然るべきではないかと思います。今年4月には、サイバー攻撃の下手人に対する制裁の発動を可能にする大統領令が成立しています。

  
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