イノベーションの風を読む

2015年10月19日

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 しかしこのシナリオには、モノのインターネットによって人々にどんな価値が提供できるかという視点が欠けている。ウェアラブルやモノのインターネットによってビッグデータが収集できれば、何か(わからないが)きっと素晴らしいことができるという。そこには、その情報で顧客にあった何かを提案できれば、きっと顧客も嬉しいに違いないというマーケティング業界の思い込み(思い違い)がある。

 新しいアイデアやテクノロジーが生まれた時、メディアの過剰な煽りなどによって市場の期待が急激に高まることがある。それをハイプ(Hype)という。しかし、その新しいアイデアやテクノロジーの未成熟さから、なかなか実際の製品やサービスとして実現されないと、その期待が一気に幻滅に変わる。そして、そのなかから成熟したものが生き残り、実際の製品やサービスとして市場に提供されていくという流れを、ガートナーはハイプ・サイクルと呼んでいる。

(出典)ガートナー・ジャパン(2015年8月プレスリリース)
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 ガートナーのハイプ・サイクル上では、モノのインターネットは、まさに「過度な期待」のピークにあり、実際の製品やサービスとして市場に提供されるまで、5~10年を要するとされている。ちなみに、2014年に発表されたハイプ・サイクルの図には、ビッグ・データが「過度な期待」のピークと幻滅期のちょうど境にあったが、今年の図には表示されていない。

 モノのインターネットには、M2M(マシンツーマシン)と呼ばれるインダストリアル・インターネットも含まれる。こちらのモノのインターネットは、工場設備や発電所のタービン、そして建設機械などをネットにつなげて情報を収集し、遠隔でコントロールするなどの事例がある。

もうひとつのIoTがスマホエコノミーに
変化をもたらす

 2006年にナイキ(とアップル)が「Nike+iPod」を発売した。靴底にセンサーが仕込まれた、ゴムと布などで作られたランニングシューズが、iPodとパソコンのiTunesを介して間接的にではあるが、インターネットにつながったのだ。それは、モノのインターネットがモノに新しい価値を与え、人々に新しい体験を提供する可能性を示していた。

 2001年のマックワールドエキスポでアップルがiTunesを発表したとき、スティーブ・ジョブズはデジタルハブという構想を紹介した。パソコン(Mac)が、さまざまなデジタル機器を相互連携させるためのハブとしての役割を担うことによって、デジタル機器が人々のライフスタイルをもっと楽しく便利にするものになるというものだ。スマホエコノミーの時代になり、デジタルハブの役割はパソコンからスマートフォンに移った。そして、モノのインターネットの時代が来るのであれば、その役割を担うのはクラウドになる。靴底のセンサーは、直接クラウドにつながる必要がある。

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