自動車の都、と言えば誰もが思い浮かべるのが米ミシガン州デトロイト。しかしデトロイトは自治体としては米最大の財政破綻都市となり、その寂れ方は尋常ではない。現在デトロイトに本社を持つ自動車メーカーは実はゼネラル・モータース(GM)のみ。フォード・モータースの本社は同じミシガン州ながらディアボーン市、クライスラー本社はデトロイト近郊ではあるがオーバーン・ヒル市にある。
かつてはデトロイトの人口の3分の1が自動車関係の仕事に携わっている、と言われていた。しかし工場はより地価が安い南に移り、グローバル化の影響で国外に組み立て工場が作られるケースが多くなった。今や自動車の都デトロイトはその形骸だけが残る存在だ。
自動車の都がシリコンバレーとなる理由
では、この先米国で自動車の都と呼ばれるのはどこになるのか。それはシリコンバレーだ、という意見が圧倒的だ。
元々多くの自動車メーカーはカリフォルニア州にR&D施設を持っている。同州の登録車両台数は1000万台以上で全米トップ、大学や研究施設も多く共同作業がしやすい、車に関してのトレンドはカリフォルニアから生まれる、など様々な理由がある。
それに加え、現在の車はITとは切っても切り離せない関係になりつつある。テスラがその好例だが、シリコンバレーで噂のアップルカー、グーグルの自動運転への取り組みなど、これまで既存の自動車メーカーとは関係のなかった企業がどんどん自動車の分野に進出している。EVに関して言えばすでにカリフォルニアは全米の生産開発ハブでもある。
ここに来て、既存の自動車メーカーもユニークな動きを見せはじめた。まずフォードがテスラからも近いロケーションに新施設を建設。噂によれば100人以上の元アップルエンジニアを採用し、「人間と車との相互関係、ドライビングシミュレーター、ソフトウェア」などを研究開発するのが目的だという。同研究施設の長であるドラゴス・マシウカ氏は「100年以上にわたり自動車業界は機械工学の世界だった。しかし今それはソフトウェアに移行しつつある。そしてソフトウェアのメッカはシリコンバレーだ」と語る。