日産自動車は検討している軽自動車の自社生産を当面、先送りした。自社工場での生産がコスト的に合わないと判断したためとみられ、これまで通り、次期モデルについても協業関係にある三菱自動車工業の水島製作所(岡山県倉敷市)で生産する。ただ、日産と三菱自動車、それに両社の軽自動車開発の合弁会社であるNMKVはこれまで同様、軽の共同プロジェクトを進めるとともに、開発面における日産の関与をさらに強めることで合意しており、日産・三菱の軽プロジェクトは日産色が強まりそうだ。
日産は2002年、スズキから軽自動車のOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けて同市場に本格参入、国内自動車市場において軽の比率が高まるのに伴って販売台数を伸ばし、今では「日産の国内総販売台数の2割以上に達している」(業界関係者)状況だ。
こうした中、日産は国内販売強化策の柱として軽自動車の増版を掲げ、装備の充実や斬新なデザインの採用など、商品力の強化に取り組む方針を打ち出した。三菱自動車との協業プロジェクトもその一環で、11年6月に両社合弁で、軽の企画・開発を担う合弁会社NMKVを設立、その第一弾として13年6月に、日産の『ディズ』、三菱の『ek ワゴン』をそれぞれ市場投入した。販売も順調で、両ブランド合わせた累計販売台数は、今年9月末までに50万台を突破している。
この協業プロジェクトにおける生産は三菱の水島製作所が担い、水島の操業アップにも貢献してきた。だが、日産は当初から軽の自社生産を模索してきたという事情がある。
狙いは国内生産100万台体制の再構築だ。とくに日産は小型世界戦略車『マーチ』の生産を追浜工場(神奈川県横須賀市)からタイやインドなど新興国での生産に切り替えた経緯もあり、国内空洞化対策という狙いもある。
だが、新型車を生産するためには、新たな生産ラインの構築や治工具の準備などでかなりの設備投資が必要なことも事実。一方で、三菱も「水島にとって軽は主力生産車種。操業を維持していくためには日産ブランド車の生産は欠かせないところ」(業界関係者)だ。受託生産費をかなり引き下げてでも受託したかったに違いないと関係者は見る。
日産の自社生産先送りは、両者をはかりにかけた上での決断ともみられるが、今回の決定によって次期モデルの開発面では、登録車に採用されている自動運転技術の採用など、日産の関与がさらに高まったことも事実だ。両社の軽をめぐるかけ引きは今後も続きそうだ。
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