2024年11月24日(日)

イノベーションの風を読む

2015年11月16日

iPhone依存度が増加するアップル

 10月27日にアップルは、2015年度第4四半期(9月26日まで)の業績を発表した。アップルのサイトには、CEOティム・クックの次のような言葉が掲載されている。

 「2015年度は、売上高が28%増大し2340億ドルとなるなど、Appleにとってこれまでで最も業績の良い年となりました。この継続的な好業績は、地球上で最高の、最も革新的な製品を作ることへの私たちの取り組みの結果であり、私たちのチームがとてつもない努力をしてきたことを証明するものです」

 売上高の伸びに貢献したものとして、過去最高となったiPhoneの第4四半期販売台数、Apple Watchの取扱店の拡大、そして過去最高のMacの販売台数とサービスからの収益を上げている。しかし、数字を見てみるとiPhoneへの依存度が増加していることがわかる。

アップルの発表資料より筆者作成
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 グラフは四半期ごとの各製品の売上げ額を示している。その他(Other)には、Apple TV、Apple Watch、Beatsのヘッドホン、iPod、そしてオンラインと店舗のアップルストアで販売されるサードパーティー製を含めたアクセサリーの売上げがまとめられている。全体に占めるiPhoneの売り上げの割合を、折れ線で表してみた。2015年度は60%を超えている。

 アップルは2016年度第1四半期の業績について、売上高として755億ドルから775億ドルという予想を公表している。その数値からiPhoneの割合を70%として計算すると、およそ8000万台のiPhoneを販売しようと考えているようだ。これまでの記録は、2015年度第1四半期の7468万台だった。

 例によって、Apple Watchの販売台数は公表されなかったが、2015年度の第3四半期と第4四半期の「その他」にはApple Watchの売り上げが含まれている。第1四半期と第2四半期の数字は 2014年度に比べると落ち込んでいる。Apple Watchがなかった場合の第3四半期と第4四半期の数字も、対前年比90%程度だったと仮定すると、差分(増加分)の約24億ドルはApple Watchの売り上げと見ることができる。6カ月でおよそ500万台というところだろうか。

 ティム・クックの言葉は次のように続いている。

 「まもなくホリデーシーズンが始まりますが、AppleではiPhone 6sおよびiPhone 6s Plusをはじめ、ケースとバンドの種類をさらに充実させたApple Watch、新しいiPad Pro、そして今週出荷が始まるまったく新しいApple TVなど、これまでで最高の製品ラインナップを用意しています」

 エルメス社と協力して「ケースとバンドの種類をさらに充実させた」というApple Watchは、日本円で13万8000円から18万8000円という高額商品だ。日本では10月3日の発売日には、販売店で行列ができて品切れになる商品も出たという。しかし、ギフト需要などが見込まれるホリデーシーズンを含む2016年度第1四半期でも、Apple Watchが大きく売り上げを伸ばすとは思えない。

 iPodにしてもiPhoneにしても、その売り上げが急激に伸びたのは発売から2~3年が経ってからだ。アップルの画期的な製品に、人々の理解が追いつくのに時間がかかったということもあっただろうが、やはり機能面での進歩やインフラ環境の整備に時間が必要だった。その時間は、Apple Watchにも必要だろう。


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