前編では、政府が掲げる東京でオリンピック・パラリンピックが開催される2020年に、外国人旅行者数を2000万人に増やすという目標を達成するためには、まだ十分に取り込めていない欧米からのインバウンドを獲得する必要があると述べた。
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そのために、欧米からの観光客が期待する「日本の歴史・伝統文化体験」を商品化する必要がある。商品化するということは、お金を払ってもらえるユニークな価値を明確にして顧客にアピールすることだ。
しかし、それは「日本の歴史・伝統文化体験」に、例えば入場料などのお金を払ってもらうことだけが狙いではなく、その体験を楽しむために、観光客が国内を移動し、宿泊し、食事や買い物をすることによる消費を獲得するというビジネスモデルになる。インバウンド消費の拡大のためには、外国人観光客数を増やすだけでなく、その滞在期間を延ばし、滞在中の行動範囲を拡げるための戦略が必要になる。
アンケートによると、欧米からの観光客の訪問先は東京と京都に集中している。例えば、京都から近鉄特急で35分ほどの「日本の歴史・伝統文化体験」の宝庫である奈良には、京都の1/5の観光客しか訪れていない。
日本の歴史についての基本的な知識が乏しい外国人観光客にとって、例えば奈良の寺院と京都の寺院の違いを感じ取ることは難しいかもしれない。それらと自国の文化財との違いの大きさに比べれば、見た目の奈良の寺院と京都の寺院との差は非常に小さい。京都を訪れようとする外国人観光客に、奈良に足を延ばしてもらうためには、奈良でしか体験できない価値をアピールしなければならない。もちろん、これは奈良に限ったことではない。
インバウンド・マーケティング
観光立国推進閣僚会議の「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」には、欧米からの観光客を増やすために「日本の歴史や伝統文化をテーマとした体験型訪問ツアー商品の充実を図る」とあるが、欧米の成熟した旅行者はお仕着せのツアーやパッケージ旅行は好まない傾向がある。
日本を訪れる外国人観光客は、何かのきっかけで日本に興味(Interest)を持ち、日本観光について検索(Search)し、実際に日本への旅行を実行(Action)し、その体験を共有(Share)するという行動をとることが想定される。そしてソーシャルネット(SNS)でShareされた体験が、次のInterestのきっかけとなる。