それにより、例えば、奈良を観光するとき、東大寺や法隆寺の情報を同じユーザーインターフェースで探すことができる。さらにガイドブックに掲載されていないよいうな観光スポットやレストランなども、サービスの提供者側からの積極的な情報発信が可能になる。
同じ地域にありながら、それぞれの観光スポットが別々のサイトで異なったユーザーインターフェースで情報を発信することは、利用者側から見てなんのメリットもない。地域の情報がポータルに集約されていれば、東大寺を見物して、もう少し知りたいと思ったときに、近くの東大寺ミュージアムを知ることもできるし、関連する文化財の情報にも簡単にアクセスすることができる。
観光客のSearchからActionという時間の軸、文化財の地理的な軸、そして文化財とレストラン、宿泊施設などのジャンルの軸の3つの軸で、情報を良質な同一のユーザーインターフェースで提供できれば、利用者の体験(ユーザーエクスペリエンス)は飛躍的に向上する。それによって、いわゆるクロスセル(関連商品のお勧め)が可能になり、外国人観光客の行動範囲を広げてインバウンド消費を拡大するためのマーケティングを行うことができる。
これを日本のインバウンド戦略として拡張すれば、図に示したようなジャパン・ポータルというひとつの答えになる。
キーワードはモバイル・ファースト
これまではパソコン用のWebサイトやアプリケーションをつくり、その後でスマートフォンに対応するという順番だった。しかし、それではスマートフォンの利用者(利用時)に良質なユーザーエクスペリエンスを提供することはできない。パソコンでの利用を前提とした機能や情報を、そのままスマートフォン用に詰め込んでしまうと非常に利用しにくくなる。
ジャパン・ポータルは初めからスマートフォン向けに、モバイル・ファーストでデザインすれば、良質のユーザーエクスペリエンスを提供できるだけでなく、スマートフォンならではのサービスを考えることができる。例えば、スマートフォンのGPSで利用者の位置を捕捉して、広い境内の中の建物ごとの情報を提供しても良いだろう。
商品やサービスのマーケティングは、すでにモバイル・ファーストに大きく変化しつつある。「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」の冒頭に書かれているように「力強い日本経済を立て直すための成長戦略の柱として、世界に誇る魅力あふれる観光立国の実現に向けて強力に施策を推進する」のであれば、世界に先駆けて、モバイル・ファーストの新しいインバウンド・マーケティングに挑戦すべきだと提言したい。
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