「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」では、日本に興味を持ってもらうためのプロモーション、すなわちInterestを獲得することについての記述はあるものの、Search、Action、Shareについての施策にはまったく触れられていない。これは20世紀の、「宣伝」だけに頼った過去のマーケティングだ。
人々がインターネットにつながっているスマートフォンなどのデバイスを常に持ち歩いている現代の環境では、日本に興味を持った(Interest)後の外国人観光客の行動にも積極的に関与することができるようになった。個人手配での旅行を計画することが多い欧米からの外国人観光客に、Searchの段階でどのような情報を提供できるかが、欧米からのインバウンドを増やすための重要な鍵となる。
Searchをするとき、すでに目的が明確になっていて、あとは具体的な宿泊場所や交通手段を調べるだけという場合もあるだろうが、「富士山を見てみたい」とか「美味しい和食を食べてみたい」とか「赤い鳥居が沢山ある神社へ行ってみたい」とか、まだ漠然とした期待を抱いているだけのことも多いだろう。もしかすると「アジアに行ってみよう」と思ってSearchを始め、タイに行こうと決めてしまうかもしれない。
自社の商品を売ろうとするならば、その商品の価値をアピールするのは当然だ。商品を購入しようとするとき、多くの人が口コミサイトや比較サイトの情報を参考にするようになったが、商品自体の情報はメーカーのサイトへのリンクで誘導されることが多い。
例えば、旅行についての大手口コミサイトのひとつである「トリップアドバイザー」の英語ページからリンクされた、日本の観光地の観光協会や文化財などの観光スポットのホームページは、日本語だけであったり、英語などの外国語のページがあったとしても情報が非常に少ない。その地域を訪れると、他にないどんな体験ができるのかという魅力が伝わってこない。これでは、せっかく日本やその地域に興味をもった観光(見込み)客の気持ちを掴むことはできないだろう。
ジャパン・ポータルの提案
これは、実際に外国人観光客が文化財を訪れたとき(Action)についても同じことが言える。ただ文化財を観るだけでなく、その歴史的な背景や登場人物などの情報を知ることができれば、観光の体験価値は確実に向上する。しかし、外国語のパンフレットが用意されていないことも多い。
多くの外国人観光客はスマートフォンを携行するようになった。今後は、文化財周辺で観光客向けの無料のWi-Fiを提供することは基本的なサービスだと考えるべきだ。その上で、紙のパンフレット(ガイド)の代わりに、スマートフォンで読むことができるモバイルのページを用意する。それは日本人向けのガイドをそのまま翻訳したものではなく、日本の歴史についての基本的な知識が乏しい外国人観光客のために書かれたものが望ましい。
このモバイルのページは、Searchの段階でアクセスされることも考慮すれば、ガイド用のコンテンツを作成する作業を重複することなく効率化して、よりリッチな情報を提供することができる。さらに、文化財ごとにモバイルページを作成するのではなく、その地域のポータル(入り口)サイトに集約する。