国土交通省・観光庁が発行した平成27年版の観光白書によると、2014年の訪日外国人旅行者数は、前年比29.4%増の1341万人となった。2014年の世界全体の国際観光客到着数は、対前年比4.7%増(5100万人増)だから、日本の伸び率はかなり高いと言える。
観光庁の「訪日外国人消費者動向調査」では、2014年の外国人旅行者の日本滞在中の支出(インバウンド消費)は、前年比43.1%増の2兆278億円だったという。それでも、インバウンド消費が日本の名目GDPに占める割合は0.3%にすぎない。世界全体の旅行に伴う支出は1.3兆ドルで、これは世界GDPの9%に相当する。日本の名目GDPは世界第3位(4兆9196億ドル)だから、比率が低くなるのは当然だが、米国(名目GDP16兆7681億ドル)の1.0%やフランス(同2兆8073億ドル)の2.0%と比較すると小さい。これはそれぞれ2013年の数値で、2014年の日本の名目GDPは4兆6163億ドルに減り、外国人旅行者が増えているため、インバウンド消費の比率は高くなっているはずだが、それでもまだまだ伸び代は大きいと考えてよいだろう。
政府は、東京でオリンピック・パラリンピックが開催される2020年に外国人旅行者数を2000万人に増やす目標を掲げている。人口の減少に歯止めがかからない現状で、インバウンド消費の規模拡大によって国内での消費を底上げしようという狙いだ。
次は欧米からのインバウンドを獲得する
首相官邸ホームページに、成長戦略をわかりやすくまとめたという「やわらか成長戦略。」が掲載されている。そのカギを握る4つの重要テーマのひとつ「世界経済とのさらなる統合」に Welcome to Japan! という項目がある。ここでは、外国人旅行者を誘致し、たくさんの買い物をしてもらうために「ビザ要件の免除・緩和」「観光目的の滞在期間の延長」「消費税免税対象の制限撤廃」「免税手続カウンター設置場所の規制緩和」という施策を実施したことが説明されている。
特に2015年1月には中国に対するビザ要件が緩和され、さらに中国経済の好調さと円安という好条件が重なって、いわゆる「爆買い」と呼ばれる中国からの観光客が増加した。今年の1-3月期の外国人旅行者の消費額は対前年64.4%増の7066億円、うち中国からの旅行者によるものは133.7%増の2775億円、4-6月期は全体が82.5%増の8887億円となり、このうち中国が219.4%増の3581億円と3倍になった。さらに中国、台湾、韓国、香港の4地域で全体消費の7割を占めている。
Welcome to Japan! の施策は短期的には大成功したといっていいだろう。しかし、2020年に外国人旅行者数を2000万人に増やすという目標を達成し、インバウンド消費を世界の観光大国並みに引き上げるためには、新しい取り組みが必要になる。
円グラフは日本政府観光局(JNTO)がまとめた資料を元に、2014年の観光目的の訪日外国人の数を表したものだ。やはり中国からの観光客が増えており、2013年は香港より少ない70万人だったものが2.5倍の175万人になった。
これを見ると、欧米からの観光客が非常に少ないことがわかる。米国が全体の6%、欧州では英国とフランス以外の国からの観光客は1%に満たない。観光局が8月19日に発表した資料によると、2015年1月から7月までの外国人旅行者数の累計が1000 万人を突破して1106 万人(前年同期比46・9%増)となった。しかし、それを支えた「爆買い」という現象は異常かつ一時的なものと考えるべきで、さらに中国や東南アジアの景気が急速に減速している現実を見れば、現在のペースでその地域から観光客が増加することは期待できない。欧米からの観光客を呼び込むことが、目的達成のための重要なポイントとなる。