2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月9日

イラクが米国との関係強化を望む3つの理由

 第1は、ISの攻撃を止めるためにイランの支援は有益であったが、領土の回復のためには不十分であったからである。ティクリートやバイジの奪還は、米国の空爆によって達成された。ディアラ地区については、シーア派民兵がISに勝利したとされるが、ISの攻撃は今も続いている。

 第2の理由は、シーア派民兵が、将来、シーア派内の内戦の道具になる危険があるからである。ムクタダ・サドルのような過激な人は、統治の失敗への人々の不満を利用しようとしている。サドルとイラク政府の直接対決がありうる中、シーア派内の緊張が高まっている。

 第3は、イラン側の強圧的態度への憤慨があるからである。

 このように、サドルなどを別にすると、シーア派の多数は、イランおよび米国との良好な関係を欲している。シスタニ師やアバディ首相がそうである。

米国は何をすべきか?

 この状況で米国がすべきことは次の通りである。

・イラクの治安部隊に有利な軍事バランス再建を支援すること。
・モスル奪還計画を注意深く評価すること。オバマ大統領は任期中に解放したいであろうが、解放後の統治などへの計画が要る。
・民兵の非武装化と統合を推進すること。
・新しい政治協約への進展を助けること。シーア派指導者との話し合いで、彼らはスンニ派、クルドと話し合う用意があると感じた。米国は、スンニ派多数地域が連邦地域になることを含め合意を支援すべきである。イラク指導者の多くは、イランより米国の仲介を望んでいる。
・経済改革を支援すること。戦争と石油価格下落の経済危機を乗り越えられるように支援すべきである。

 イラクは失われていない。米国にとって、イラクでの影響力を再構築する良い機会である。スンニ派、シーア派、クルドの中に、米国との新しい関係への支持がある。米国がこれに答えないのは誤りであろう。

出 典:Zalmay Khalilzad ‘Iraq Isn’t Lost to Iran’ (Wall Street Journal, March 24, 2016):
URL:http://www.wsj.com/articles/iraq-isnt-lost-to-iran-1458858395

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