2024年4月25日(木)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年5月25日

今の都心不動産はバブルの匂い

 さて、では現在の東京都心の住宅価格高騰はバブルでしょうか? それはわかりません。ただ、筆者は独自にバブルの判定基準を設けています。それは、以下の4条件が揃った時は、バブルの匂いが強いので近づかない、という方針です。結果としてバブルでなかった場合には儲けのチャンスを逃すことになりますが、それは仕方ない、と割り切って考えることにしています。その4条件とは、

①値段が高すぎると心配する人を説得するような「理論」が説かれます。日本のバブル当時は「日本経済は世界一で、21世紀は日本の時代だから、当然だ」といった感じでした。ITバブル期の米国も、「インターネットは米国経済のインフレなき成長を可能にする夢の技術だから」といった感じでした。今の東京では、「アジアの主要都市より安いので、海外の金持ちが買いにくる」といった所でしょうか。

②金融が緩和されている。日本のバブル期は、プラザ合意後の円高による輸入物価低下のおかげでインフレが防がれていて、景気が絶好調であったにもかかわらず、日銀が金融の引き締めをしませんでした。ITバブル期の米国も、インターネットのおかげか否かわかりませんが、とにかく物価が安定していたので、金融は緩和されていました。昨今の日本も、バブル的な現象は都心のごく一部で見られるだけで、景気全体はパッとしないため、金融は超緩和状態です。

③今まで投資と縁遠かった人が、急に参入してくる。バブル当時は、井戸端会議で「隣の奥さんが株で儲けた」という話を聞き、自分も株を買い始めた、といった主婦が大勢いました。ITバブル期の米国も、同様でした。今回は対象が都心の不動産ですから、サラリーマンの主婦が井戸端会議で、という事は無いでしょうが、今までと投資家層が大きく変化しているのか否かは見極めておきたいポイントです。

④当事者とそれ以外で温度差が大きい。バブル期の日本では、日本人が全員で浮かれていましたが、海外では「日本は大丈夫か」と懸念する人も多かったと聞きます。ITバブル期の米国についても同様でした。当時筆者は日本で経済予測を担当していましたが、米国出張から帰国した人が次々と「熱病」に伝染し、「米国経済は素晴らしい。米国の株高は本物だ」と言い始めたため、筆者たちは「米国に出張しない方が米国のことが良くわかる」と陰口を叩いていたものです。現在の東京では、一部の人々は盛り上がっているようですが、それ以外の人々は冷めていて、結構な温度差が感じられるかも知れません。

 こうした事を総合的に考えると、筆者個人としては「バブルの匂いが強いので近づかない」という判断に傾いています。もっとも、もともと先立つものが不足していて、近づけない、という事情もありますが(笑)。


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